月最終話 氷のキス

カルト「許せない……許せない……」

それからカルトさんと城に戻った後……

傷の手当てを受ける私のことを、カルトさんはずっと見つめていた。

けれどその瞳からは、彼の感情をうかがい知ることはできなかった…ー。

それから数日…ー。

腕の傷ももうすっかりよくなり、私は兵士さんをお供に、街までやって来ていた。

子ども「お姉ちゃん、もっと大きく大きく!」

◯◯「もっと?」

子ども「そう! もっと大きくするの!」

子ども達と一緒に、雪だるまを転がす。

兵士さんにも手伝ってもらい、大きくなった雪の頭を胴体にのせた。

◯◯「完成だね!」

子ども達が、喜んで雪だるまの周りを踊り出した。

(かわいいなあ……)

子ども「お姉ちゃんも!」

◯◯「え……?」

腕を引かれ、私も踊りの輪に加わったその時…ー。

◯◯「っ…… !」

私は凍った地面に足を滑らせた。

◯◯「痛い……」

兵士「大丈夫ですか!?」

兵士さんが、私の腕を引いて立ち上がらせてくれると、丁寧に私のコートの裾についた雪を払ってくれた。

◯◯「ありがとうございます」

兵士「いいえ」

兵士さんににっこり笑いかけたその時……

私の腕を、誰かが強い力で引いた。

◯◯「え……?」

振り向くと、カルトさんが怖い顔をして私を見つめていた。

◯◯「カルトさん……?」

兵士「カルト王子!」

(どうしてここに……)

◯◯「お仕事は終わったんですか?」

カルト「駄目……」

◯◯「え……?」

カルト「駄目だ……」

私の腕を強引に引いて、カルトさんが歩き出す。

◯◯「カルトさん……?」

手を引かれながら、私はカルトさんの背中をただ見つめていた。

……

スチル(ネタバレ注意)

カルトさんの部屋まで来ると、彼は突然私を抱きしめた。

◯◯「! ど……どうしたんですか?」

不意に抱きしめられて、胸がドキドキと鳴り始める。

彼の冷たい指が、私の頬を捕えた。

(え……?)

氷のような瞳に見つめられ、私は息をすることも忘れて…ー。

魔法にかけられたように、彼の瞳を見つめることしかできなかった。

すると…一。

◯◯
「っ……!」

唇に、冷たく柔らかなキスが落とされる。

(キス……?)

彼の長くて綺麗な指が、私の頬を撫でる。

唇がゆっくりと離れると、結晶のように澄んだ瞳が私を見据えた。

カルト「知ってる…… ? 氷の魔術を込めたキスを受けると……心が凍ってしまう……」

◯◯「んっ…… !」

再びキスをされて、唇が甘く噛まれた。

カルト「このまま……凍ってしまえばいいのに……。 あなたの心が…誰にも……向かないように……」

深く重なるキスに、頭が痺れていく。

◯◯「っ……カルトさん……」

私の熱い吐息と、彼の冷たい息が混ざり合う。

カルト「駄目…ぼく以外が……触れるのは……。 あなたに雪が降りつもったら……ぼくが払う……。 あなたが熱いのなら……凍らせる……ぼくが……」

抱きしめる彼の腕から、冷気が放たれ、体に冷たい痛みを感じる。

◯◯「っ……冷た……」

カルト「誰にも……渡さない……」

体は凍っていくのに、それ以上に胸が熱くなっていく。

(どうして、こんなに胸が熱いの……)

◯◯「カルトさん……私は…ー」

彼の指の冷たさを再び頬に感じて、紡ごうとしていた言葉が凍りついた。

そして…ー。

カルト「永遠に……ぼくの傍に」

◯◯「っ……」

彼の氷の口づけを受けて、目を閉じる。

(頭が……ぼんやりして……)

冷たい腕に抱かれ、私は彼の胸の温もりを追い求めた…ー。

 

おわり。

 

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