第2話 舞い落ちる雪に

雲間から朝の透明な光が降り注いでいる…ー。

カルトさんに連れられ、私は城下町までやって来た。

カルト「寒い……?」

◯◯「大丈夫です」

カルト「無理、しないで……」

気遣ってくれる彼の優しさに、思わず頬が緩む。

◯◯「大丈夫です。たくさん着込んで来たので、今だと暑いぐらい」

カルト「そう……。 何かあったら、言って……」

◯◯「ありがとうございます」

カルトさんと一緒にお店を見て歩く。

カルト「……」

口数少ないカルトさんは、私が行くところに何も言わずについて来てくれる。

けれど……

(カルトさん……無理して付き合ってくれてるんじゃないのかな)

(早くお暇した方がいいんじゃ……)

無表情な彼を見ていると、胸に微かな不安が湧いてくる。

◯◯「あの……もう戻りますか?」

カルト「どうして……?」

◯◯「いえ……」

カルト「……」

上手く言えない私を、カルトさんが見つめている。

ふとその時、目の前にひとひらの白い雪が舞いおりた。

◯◯「雪……」

見上げると、雲間から昨日の雪とは違う、大きく柔らかそうな雪が次々に舞い降りてきた。

◯◯「わっ…… !」

私は空を仰ぎ、両腕を広げる。

◯◯「すごい……雪の結晶がはっきり見える」

カルト「純度が高い……氷の国だから……」

◯◯「そうなんですか。 私のいたところでは、すぐに溶けてしまうし結晶の形まではよく見られないんです」

雪の結晶が、手のひらの上で、ゆっくりと溶けて消えていく。

カルト「……」

ふと、カルトさんが空を仰ぎ見た。

◯◯「カルトさん?」

彼は静かに手を空に差し出す。

その手のひらに雪が舞い降ちた。

カルト「……」

何も言わずに彼は私に手を差し出した。

◯◯「え……?」

カルト「……ぼくの手の方が、よく見える……冷たいから」

◯◯「ありがとうございます……」

カルトさんの手のひらで、雪の結晶が小さな輝きを放つ。

◯◯「いろんな形があるんですね」

カルト「うん……」

(カルトさんは、優しい人だ)

(さっきはお話できなくて、ご迷惑をかけていると思っていたけれど……)

結晶から目を離して、そっと彼を盗み見た。

透明さをたたえる瞳が、静かに結晶を見据えている。

(綺麗……)

胸がトクンと音を立てる。

その時、教会の鐘が街に鳴り響いた。

カルト「昼……」

不意に彼が視線を上げた。

◯◯「あ……」

彼と目が合い、私の頬が一気に熱くなる。

カルト「城に……帰ろう」

カルトさんは手をふわりと空に舞わせた。

彼の手のひらにのっていた雪が、静かに空から降る雪にまぎれていった…ー。

 

 

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