月5話 飲みこむ雪を超えて

雪の壁が、木々を飲み込み私に迫りくる…ー。

◯◯「カルト……さ…一! !」

声が震えて、彼の名前を上手く呼べない。

先ほど弾がかすった腕が、痛みを訴えている。

(止めないと…… ! )

必死にカルトさんへ手を伸ばした。

◯◯「カルトさん…… !」

押し寄せる雪の轟音の中、彼の名前を必死に叫ぶ。

その時…ー。

カルト「◯◯……」

カルトさんが苦しげな表情を浮かべながら、私の手を握り返した。

カルト「……っ!」

彼が空いている方の手を、雪崩に向けて振り上げると……

(雪が……)

迫りくる雪が、力をなくしたように雪原の中に消えていく。

◯◯「よかった……」

気が緩んで、足に力が入らなくなり、そのままカルトさんの胸にもたれかかってしまう。

カルト「◯◯……」

カルトさんは戸惑ったように、壊れ物を扱うように優しく、私の腰をそっと支えてくれた。

◯◯「カルトさんが、無事でよかった」

カルトさんの瞳が驚いたように見開かれる。

カルト「腕……」

◯◯「へ、平気です。かすっただけ…ー」

まだジンジンとする痛みをこらえて、私は笑みをつくる。

でも……

カルト「許せない……許せない……」

独り言のようにつぶやかれるその低い声色に、背筋が凍る感覚を覚える。

◯◯「カルト……さん……?」

そして、彼は私を抱きしめた。

カルト「帰ろう……」

(どうしたんだろう、様子が……?)

抱きしめられているはずなのに、

カルトさんの腕も、体も……すべてがとても冷たいと感じた…ー。

 

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