太陽7話 君に見せたいもの

楓さんの姿が、廊下の向こうへと消えていった後…―。

○○「楓さん……」

―――――

楓『明日までには咲かないだろう。残念だったね』

―――――

先ほどの楓さんの言葉が、頭の中で冷たく響く。

??「○○様、どうかなさいましたか?」

振り返ると、楓さんの従者の方が心配そうに私を見つめていた。

○○「あ、いえ……なんでもありません。 桜がまだ咲いていないので、少し残念だなって思って……」

従者「どうやら開花が遅れているようで、今しばらく時間がかかるようです。 せっかくお越しいただいたというのに、大変申し訳ありません……」

○○「いえ、そんな。仕方のないことですから」

私が笑顔でそう言うと、従者の方は少し安心したような表情を浮かべる。

けれど、すぐに申し訳なさそうに眉を下げ……

従者「……実は先日、楓様にも同じことを聞かれました」

○○「え?」

従者「桜はいつ開花予定なのかと。 まだかかると伝えたところ、楓様も同じようにがっかりされていました」

○○「楓さんが……?」

従者「ええ。では、失礼します」

○○「はい……」

私は茫然としながら、従者の方が歩いていく姿を見送る。

……

そうして、しばらく……

街を行き交う人々の肩越しに、私は楓さんの姿を探す。

(楓さん、どこに行ったんだろう?)

そわそわと視線を泳がせていると、日差しに輝く黄朽葉色の髪が目に入った。

○○「楓さん」

楓「○○……こんなところ何してるの?」

○○「山の桜はそろそろ開花しているかな、と思って。 先日行った時に、すでに蕾がついていしましたから。 もしよかったら一緒にもう一度……」

楓「ああ……まだ咲いていなかったよ」

○○「え……」

楓「それより、君に見せたいものがある」

楓さんは短くそう言って、城の方へと向かう。

(もしかして、桜を見に行ってくれた……?)

私は慌てて、楓さんの後を追った…―。

 

<<太陽6話||太陽最終話>>