太陽6話 冷たい声

廊下から見える中庭には、春の訪れを知らせる鳥が優雅に飛び回っている。

穏やかなそよ風が、私の頬を撫でていった。

(綺麗な風景……)

けれど、桜の花はまだ咲く気配がない。

(いつになったら咲くんだろう)

桜の木を見つめていた時、楓さんが通りかかった。

楓「こんなところでぼんやりしてると邪魔だよ」

○○「……すみません」

楓「何を見てたの?」

楓さんが私の横に並び、中庭を見渡す。

○○「桜の木です」

楓「……」

○○「でも、まだ咲きそうにありませんね。 明日、帰らなければいけないのに……」

明日のことを思うと、きゅっと胸が締めつけられる。

けれど……

楓「なんだ、そんなことか」

○○「え……」

楓「明日までに咲かないだろう。残念だったね」

楓さんは意地悪そうな笑みを浮かべてそう言うと、踵を返して歩き出した。

○○「……」

楓さんの背中が小さくなっていく。

(どうして、楓さん……)

楓さんの背中に何も言えないまま、私はしばらく立ち尽くしていた…―。

 

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