広いホテルの一角に、人々の楽しそうな談笑が溢れている…―。
そんな中、私はそっと窓の外を見た。
(そういえば、このところずっとアルマリと一緒だった)
そう思うと、途端に胸にぽっかりと穴が空いたような気持ちになってしまう。
(……私も散歩にでも出かけようかな?)
寂しさを振り払うように、私は一人街に出かけた…―。
レコルドの街は先日アルマリと訪れた時と変わらず、賑わいを見せていた。
(少し、寂しいな……)
広いベンチに座って手をつくと、先日、彼が握ってくれていた手の体温を思い出す。
ちくりと胸を刺した寂しさを忘れようと、視線を上げると…―。
アルマリ「……」
(あれ? 今のアルマリじゃ……)
街角の奥に消えて行った人影に、座っていたベンチから腰を浮かす。
急いで、彼が消えた方へ歩みを進めると……
(ここは……)
『レコルドガラス工芸店』と掲げられた、趣のある看板が目に入った。
入り口から店の奥を覗けば、アルマリが店主と何か話している。
(大切な用事ってこのことだったのかな?)
さまざまなガラス細工の並ぶ工芸店の奥で話をするアルマリの表情は、真剣そのもので…―。
―――――
アルマリ『うん、ごめんね。今日は大切な用事があるから君とは一緒に過ごせないんだ』
―――――
出かけにアルマリの言っていた言葉を思い出す。
(邪魔したら悪いかな……?)
彼に声をかけたい気持ちをぐっとこらえ、その場から立ち去ったのだった…―。
その日の夜……
ホテルの部屋で、窓辺から静かに星を見る。
(明日はまたアルマリと一緒に過ごせたらいいな……)
そんなことを思っていると部屋の時計が鳴った。
(……もうこんな時間だ)
そっと窓から離れ、床に就こうとベッドに腰かけた時だった。
アルマリ「○○、まだ起きてる?」
○○「アルマリ?」
聞きたかった声が響いて、私は急いで扉へと向かった。
アルマリ「ごめん、こんな夜遅くに……」
○○「どうしたの?」
アルマリは少し頬を赤くして、言葉を慎重に選ぶように口を開く。
アルマリ「あのね、明日の夜、一緒に食事に行かない? 僕に……君をもてなさせてほしいんだ」
○○「アルマリが私を……?」
アルマリ「……うん」
小さく返事をした彼は、どこか落ち着きのないように見えた…―。