太陽8話 温もり

ここ最近の日課となっていた、煌牙さんとの部屋遊びの最中……

慌ただしい足音と共に従者の方々が数名駆け込んできた。

煌牙「何用じゃ。慌ただしいのう」

嫌がりつつも、その尋常ではない雰囲気に煌牙さんの表情が険しくなっていく。

従者1「も、申し訳ございません……」

煌牙「良いから、早う用件を申してみよ」

従者1「はっ……実は、地下牢に閉じ込めておいた例の賊共ですが……」

従者1「本日見回りの際に、姿を消しておりました!見張りの者も気づかずに……申し訳ございません!」

煌牙「……」

煌牙さんが、衝撃に目を丸くし、きゅっと眉根を寄せた。

(逃げたなんて……一体どうやって……)

従者2「煌牙様。申し訳ございません。いかがすれば……」

煌牙「……考えておく。もう下がって良い」

従者1・2「はっ……」

立ち去る従者の方々を目で確認して、煌牙さんが深くため息を吐いた。

煌牙「わしは浮かれていたのであろうな……」

◯◯「え……?」

落ち込んでいるのか、しゅんと耳を垂らし悲しげに長いまつ毛を揺らしている。

(煌牙さん……?)

煌牙「おぬしと過ごす時間がとても楽しかったのじゃ。 そのせいで油断をし……普段ならこのような異変、気づけたはずであるのに……」

◯◯「煌牙さん……」

煌牙「あいつらは、我が国の薬……伊薬を悪用しようとする輩じゃ。 何たる失態……」

煌牙さんの悔しげな声音が、また私の胸を締めつけて……

煌牙「っ……!」

気づけばそっと、煌牙さんの頭を優しく撫でていた。

驚いたように目を丸くして、煌牙さんが顔を上げる。

◯◯「あ……ご、ごめんなさい……!」

(こんなことをしては、また不愉快にさせてしまうかもしれないのに……!)

慌てて手を引っ込め謝罪をする。

けれど煌牙さんは……

煌牙「……なにゆえ、謝るか?」

どこか儚げな笑みを浮かべ、煌牙さんが柔らかな声音を奏でる。

煌牙「おぬしは、わしを慰めてくれたのであろう?」

◯◯「……はい」

煌牙「ならば、何も謝ることはないのじゃ」

その笑みはやはり儚げで、その上ひどく大人びたもので……

(なんだか胸が……とても騒いで……)

吸い込まれるようなその微笑から、目が離せなくなっていると……

煌牙「幼子の頃……はるか昔のことだが、感じたことのある温もりを思い出した。 もう一度……撫でてくれるか?」

甘えるように言いながら、やはりどこか大人びている。

不思議な魅力をまとい、煌牙さんは微かに瞳を潤ませた。

◯◯「……はい、私でよろしければ」

煌牙「おぬしがいいのだ」

言われてそっと手を差し伸べる。

煌牙さんは、ころんと私の膝の上に頭を乗せて小さく丸まった。

煌牙「気持ちが良い……おぬしの手は本当に……気持ちが良いのう……」

少し掠れたその声音が、脳裏に、鼓膜に焼きつくようだった…ー。

 

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