第2話 見たことのない景色

フロスト「…そうか。 では、ついてこい」

威風堂々とした立派な背中を追いかけ、私も慌てて歩き出す。

○○「あの、どちらへ行かれるんですか?」

と問いかけると、フロストさんはちらりと私を振り返った。

フロスト「この国で行われているアイドルのライブを見に行く」

○○「えっ?」

フロスト「お前はアイドルというものを知っているのだろう」

なぜか不機嫌そうに、フロストさんは私に言い放つ。

フロスト「まさか、お前がアイドルを知っていたとは驚いた。少々不愉快だが、教えを乞うことにする」

○○「教えって…」

フロスト「来い」

フロストさんは私の手を引き、ライブ会場へとためらいなく向かっていった…-。

会場に到着すると、城内はすでに大勢の女性客でひしめいており、大変な熱気で溢れかえっていた。

フロスト「…っ! なんだ、これは…」

会場に足を踏み入れた途端、フロストさんの深紅の瞳が見開かれる。

(すごい人…)

二人で会場の熱気に飲まれてしまっていると、案内係の男性が説明を始めてくれた。

案内係「本日は、複数の男性グループアイドルが登場するイベントライブになっています。 なので、女性のお客様が多くなっていますね」

フロスト「…それはつまり、女性アイドルになれば男性客が多くなるということか?」

案内係「え…?は、はい。そうですね」

フロスト「ふむ。では…-」

フロストさんは真剣な表情で、案内係の人に質問を投げかけていた…-。

その後、フロストさんと一緒に招待席に案内され席に着いた。

フロスト「…」

フロストさんは、睨むようにステージを見据えている。

それからしばらくして、一度照明が落ちたかと思えば…-。

アイドル1「今日もどうぞよろしくー!!!」

明るい声が場内に大きく鳴り響いた。

きゃあっと黄色い歓声が沸き上がり、それからすぐに音楽が流れ出す。

フロスト「なんという熱気だ…」

大歓声に掻き消されかけたフロストさんの声が、わずかに耳に届く。

そして、まばゆいスポットライトと共にアイドル達が壇上に現れた瞬間…観客が総立ちになってさらなる大歓声を上げた。

フロスト「っ…!」

色とりどりの照明に、明るい笑顔をふりまき歌とダンスを始めるアイドル…それに、完全に総立ちになった女性客の驚くほどの熱気…

(すごい…!)

フロスト「…」

隣を見ると、フロストさんは難しい顔のままじっとステージを見つめていて…

○○「フロストさん、大丈夫ですか?」

フロスト「…問題ない」

フロストさんは視線をステージに向けたまま、軽く頷いた。

フロスト「…。 この照明と音楽…それに踊りの組み合わせはどうやって実現しているんだ」

険しい顔でステージを見ていたフロストさんが、感心したように言う。

○○「入念な打ち合わせと、練習と…あと、センスも必要そうですね」

フロスト「技術力も必要だ。 しかし、観客は少しも落ち着かず、立ち上がって、演者に対して失礼だろう」

○○「これは、アイドルと一体になるというか…喜びとか、応援の表現なんです」

フロスト「…なるほど。では、あのライトを勢いよく振るのはなぜだ? 色がさまざま変わって…」

それからも、フロストさんの真面目な質問が続いた…-。

ライブ終了後…

まだどこか熱気を残したような会場を後にして、フロストさんと歩く。

フロスト「…」

フロストさんはライブが終わった時からずっと、何やら考え事をしていて…

(どうしたんだろう? 衝撃的…だったのかな)

○○「あの…-」

声をかけた、その時だった。

フロント「せっかくだ。俺も、アイドルとやらに挑戦してみよう」

○○「え…?」

突然の言葉に驚き、思わず勢いよくフロストさんの顔を見てしまった…-。

 

 

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