多くの笑顔をもたらした、楽しいライブが終わった後・・・ー。
会場を出た私は、その余韻から抜け出せずにいた。
○○「すごかったですね、さっきのライブ・・・・・・」
目をつぶれば、あの熱気に満ちた会場がまぶたの裏に浮かぶ。
誰もが自然と笑顔になるような歌とダンス、それに会場の空気・・・・・・
(本当に楽しかったな)
まだ胸の高鳴りが収まらない。
シュニー「・・・・・・そんなに楽しかった?」
○○「はい、とても!」
私はシュニー君に、素直な気持ちを答えると・・・・・・
シュニー「笑顔になってたのは、お前の方でしょ?」
シュニー君が、口元に薄く笑みを浮かべながら私を見つめる。
○○「はい。あんなパフォーマンスを見ていたら、こっちも笑顔になっちゃいますね」
シュニー「ふーん、そう・・・・・・」
そっけなくそう言うシュニー君だったものの、その表情は明るかった。
(よかった、ちゃんと楽しんでもらえたみたい)
(アイドルのことも、わかってもらえたかな)
そんなことを思っていると・・・ー。
??「君! そこの君!」
シュニー「・・・・・・僕?」
勢いよく駆け寄ってきた男の人に、シュニー君は首を傾げる。
??「そう、そこの君だよ! ああ、やっぱり僕の見込んだとおりだ! 君のその雪のように綺麗な顔!いいね、最高だね!」
シュニー「・・・・・・なんだ、お前?」
??「おっと、失礼。つい興奮しちゃったけど・・・・・・僕はこういう者だよ」
男の人はシュニー君に名刺を渡し、一つ咳払いする。
スカウト「僕はあそこにあるライブ会場を仕切っている者でね、見込みのある人のスカウトもしているんだ」
男の人が指差す先には、先ほどのライブ会場があった。
○○「スカウトって・・・・・・もしかして」
スカウト「その通り!遠くから見ても美しい顔立ちに、ピンときたんだ! 君、アイドルやってみない?」
シュニー「僕が、アイドル?」
スカウト「そう!近々ライブがあるんだけど、それに出てみないか?」
(シュニー君が・・・・・・!?)
突然のスカウトに、自分のことのように胸が熱くなる。
すると・・・・・・
シュニー「・・・・・・おい。お前はどう思うんだ?」
○○「えっ?そうですね。シュニー君なら・・・・・・人を楽しませられるアイドルになれますよ!」
シュニー「・・・・・・お前も楽しんでくれるんだ?」
○○「もちろんです!」
私の意見を参考にしてくれたのかはわからないけれど・・・・・・
シュニー「・・・・・・そうか。 まあ、やってみるのもいいかもね」
シュニー君の綺麗な顔に浮かんだのは、前向きな表情だった。
スカウト「本当かい!?」
○○「あ・・・・・・でも、ダンスもありますけど・・・・・・」
おずおずとシュニー君の様子を伺うと、彼は呆れたように息を吐いた。
シュニー「僕にできないことがあるわけないでしょ。それに、人々を笑顔にするのも王子の務めだからね。仕方ないからやってあげるよ、アイドルっていうの」
そう自信たっぷりに答えるシュニー君は、早くもアイドルのようにきらきらと輝いて見えた・・・ー。