第2話 眠たげな彼

テルさんからビートン・フィルムパークに招待された私は、これからまだ仕事があるという彼と別れた後…―。

テル「すまないね。せっかく君を招待したのに、もてなすことができなくて」

○○「いえ……こちらこそお忙しいのにすみません」

夕方までプレオープン前のパークを見学し、宿泊先となるケナル城へとやってきた私は、テルさんに、城の一角にある豪華な部屋へと案内してもらう。

テル「今日はこの客室でゆっくり休むといい。 あと、これはプレオープン用に刷ったものなんだけど……」

テルさんか一冊のパンフレットを手渡される。

テル「俺はプレオープンまではずっと仕事詰めだから、よかったら明日はこれを見ながらパークを回るといい。 ほとんどのアトラクションが最終点検中だけど……散歩するだけでも楽しいと思うから」

○○「わかりました、ありがとうございます」

私がそう返事をすると、テルさんが目を細めた。

テル「招待状にも書いた通り、このパークのアトラクションは映画が元になってるんだ。 建物や乗り物、そして映像……パークを形作るすべてのものに力を入れてるから、期待していてくれ」

○○「はい!」

(でも、そういえばテルさん自体が深く関わるアトラクションって……)

私は気になってパンフレットを開いてみた。

けれどそこには総指揮として記されているだけで、彼の名前を冠したアトラクションがない。

その時…―。

テル「……っ」

○○「テルさん!?」

テルさんの体がくらりと揺れ……

次の瞬間、彼は傍にある机へと勢いよく手をついた。

○○「テルさん、大丈夫ですか!?」

テル「あ、ああ。大丈夫だ。 心配をかけてすまない。ここのところ忙しかったせいで、あまり寝てなくて……」

力なく笑うテルさんの顔を、そっと覗き込む。

すると……

テル「本当に大丈夫だよ。 少し立ちくらみがしただけ。けれど……」

顔を上げたテルさんが、私をじっと見つめる。

テル「……」

○○「どうしたんですか?」

テル「いや、心配してくれるのが嬉しかった……特に深い意味はないんだ」

軽く頭を振った後、彼は力なく笑う。

(やっぱりこんなテルさんを残して一人でパークを回るなんて……)

○○「あの、よかったら私にも少しお手伝いさせてください」

テル「……いいのかい?」

驚いたように言うテルさんに、私は静かに頷く。

テル「そうか……ありがとう」

眠気のせいか、いつもよりわずかにゆっくりとした口調は、なんだか甘えているみたいで……

(頼ってもらえてるみたいで、嬉しいな)

先ほどまでの不安は和らぎ、温かな気持ちが湧いてきたのだった…―。

 

 

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