頭上に咲く華やかな花火の光と、パークを彩る映像の光……
○○「綺麗……これがテルさんの考えたアトラクション……。 すごいですね、私こんなの想像もしてなかったです……」
テル「ありがとう。以前、君には少し話したが……。 俺は、このプロジェクションマッピングで映画の国の王子として伝えたいことがあったんだ」
○○「え……？」
（それって、あの時の……）
―――――
テル「演技じゃない、リアルな感動。人の歓び……そして驚き……それらを俺は残したい。 俺がこの映像に込めた思いを、受け取ってくれた人々の姿を……！」
―――――
首を傾げる私に、彼はゆっくりと言葉を紡ぐ。
テル「映画がどれだけ多くのものを人の心に与えてくれるか……。 この世界に存在する多くの思いを皆と分かち合えるものにしてくれるのか……。 俺は、それを皆に知って欲しかったんだ……」
そう言うと、テルさんは映像から私に視線を移した。
テル「伝わったかな？」
耳元に柔らかく囁かれる。
その瞬間、再び夜空に大きな花火が上がった。
○○「はい。とても響きました……。 きっとこのパークにいる皆の心にも届いていると思います」
（だってこんなに美しくて夢のようで……）
テルさんの映画にかける思いに、胸が熱くなる。
するとその時、彼に肩を抱き寄せられて…―。
テル「よかった。今日という日を君と一緒に迎えられて……」
○○「テ、テルさん……？」
彼の体温が、触れた肩から伝わってくる。
するとまた花火が上がって、頭上に大輪の花を咲かせた。
○○「やっぱり……すごいです」
（何度見ても、こんなに心を揺さぶられるなんて……）
湧き上がる素直な気持ちを彼に語る。
けれど…―。
テル「……」
彼は穏やかに微笑みながら、ただひたすらに私の顔を見つめている。
○○「テルさん……？」
テル「……あ、ごめん……」
テルさんの瞳が揺れる。
かと思えば……
テル「君の笑顔はやっぱりいいなと思って……。 なんだろう、この気持ちは……このままずっと見ていたくなる。 今の君は俺にとっての被写体じゃないのに、どうしてだろう……？」
不思議そうに言った後、彼は考え込むような素振りを見せた。
そんな彼に、私は……
○○「きっと……テルさんの作品を通して、私達の心が繋がったからじゃないでしょうか？」
テル「心……？ 君と、俺との……？ ……そうか。きっと、君の言う通りだね」
深く感じ入るように息を吐き出すと彼は私を見つめる。
テル「君が隣でそんな顔を見せてくれるなら、これからもいくらだって新しい画が撮れそうだ……。 ○○……」
○○「テルさん？」
彼の頭が、私の頭にこつんとぶつかる。
するとその時、夜空にひときわ大きな花火が上がって…―。
テル「これからも俺の傍にいてくれ。 心が繋がった、ただ一人の……誰よりも大切な一人の女性として」
私は幻想的な光景の中でテルさんと寄り添い合いながら……
○○「……はい」
そっと、彼の想いを受け取ったのだった…―。
おわり。
