第5話 キミの応援

私とミヤが魔術の練習をしに来ると、森の奥からルーガ君の叫び声が聞こえてきた。

叫び声がした方へ向かうと…―。

○○「……!」

ルーガ君の目の前には、巨大な火の玉が浮かび上がっていた。

するとその火の玉が、突然ルーガ君に襲いかかり……

(危ない……っ!)

ミヤ「ルーガ!」

ミヤはすぐさま呪文を唱えると、火の玉はすっと消えていった。

○○「ルーガ君、大丈夫!?」

しばらく放心状態だったけれど、私とミヤが駆け寄ると、ルーガ君は堰を切ったように泣き始めた。

ミヤ「怖かったよな、もう大丈夫だから」

ミヤはルーガ君を抱き寄せて、優しく背中をさする。

ふと視線を落とすと、ルーガ君の足元には魔術書が転がっていた。

(もしかして、さっきの火の玉って……)

ミヤは魔術書を拾い上げて、ルーガ君に渡す。

ミヤ「偉いな、ルーガ。魔術の練習をしていたんだね」

ルーガ「……うん。モーガみたいに優秀じゃないから、いっぱい練習しなきゃいけないけど……」

(ルーガ……)

ルーガ「でも、やっぱり無理かな……」

ルーガ君は、小さな肩を震わせている。

ミヤ「そんなことないよ」

ミヤは、ルーガ君の目をまっすぐに見つめる。

ミヤ「一生懸命練習すれば、きっとできるようになるよ」

ルーガ「ミヤ様……」

ミヤ「オレも、今度の祭典で難しい魔術を披露しようと思っているんだ。だから、たくさん練習しないと」

ルーガ「ミヤ様も、たくさん練習するの?」

ミヤ「ああ、まだ失敗ばっかりだけどね。成功するように頑張るよ。 だから、ルーガも頑張ろう!」

ルーガ君の表情が、ぱっと明るくなった。

ルーガ「ぼく、頑張る! 魔術を覚えたら、ミヤ様とお姉ちゃんに見せるね!」

○○「うん、楽しみにしてるね」

ルーガ君は、魔術書を大切そうに抱えて走り去っていく。

しかし、すぐに踵を返して戻ってきた。

(どうしたのかな?)

ルーガ「あのね……モーガと比べられることは嫌だけど、モーガのことは好きだよ」

ルーガ君は照れ臭そうにつぶやく。

ミヤ「ああ、わかってるよ。オレも……イリアのことが好きだから」

ミヤもルーガ君に負けないくらい照れ臭そうにつぶやいた。

(ミヤ……)

ルーガ君はにっこりと笑うと、元気に両手を振りながら走り去っていった。

ミヤ「よしっ、ルーガのためにも魔術を成功させないと!」

気合を入れるように頬を叩くと、ミヤは私の方をちらっと見た。

(どうしたのかな?)

○○「どうしたの?」

ミヤ「いや、あの、その……」

ミヤは耳まで赤くなって、しどろもどろになり……

呼吸を整えてから少しの後、彼は意を決した表情をした。

ミヤ「あのさ、○○ちゃん……頑張ってって、いってくれるかな? ○○ちゃんが応援してくれると、もっと頑張れる気がするんだ」

消え入りそうな声に、愛しさが込み上げてくる。

○○「……ミヤ、頑張って! ミヤなら、きっと大丈夫だよ」

ミヤ「……よしっ、オレ頑張るよ!」

ミヤの笑顔が、きらきらと輝く。

その笑顔を、私はずっと見つめていたいと思った。

 

 

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