月7話 キミの笑顔を見たい

魔術の祭典、当日・・・-。

魔術が披露される闘技場には、王家一族をはじめ、他国の招待客や民衆達も集まっていた。

(ここで、ミヤとイリアさんは魔術を披露するんだ)

(こんなにも大勢の人数の視線を、いっせいに浴びながら・・・・・・)

想像しただけで、鼓動が早まっていく。

すると・・・・・・

ルーガ「お姉ちゃん!」

街の人達の中から、ルーガ君が元気よく手を振っていた。

ルーガ「ミヤ様、どんな魔術を披露するのかな~」

男の子「ぼくは、イリア様の方が楽しみ! きっとすごい魔術を見せてくれるよ」

ルーガ「ミヤ様だって、すごいよ!」

(ルーガ君・・・・・・)

魔術の練習をしていたミヤの表情が脳裏を過る。

ー----

ミヤ「・・・・・・っ、失敗だ。 ・・・・・・駄目だな」

ー----

 

ミヤの苦悩に満ちた表情が、頭から離れない。

(ミヤ、大丈夫かな・・・・・・?)

ミヤの様子が気になってしまい、控え室へと向かった。

・・・

・・・・・・

ミヤは、窓際に立って外の様子をじっと見つめていた。

○○「・・・・・・ミヤ?」

ミヤ「あっ、○○ちゃん・・・・・・」

振り返ったミヤは、いつになく硬い表情をしている。

(ミヤ、やっぱり緊張しているんだ・・・・・・)

ミヤが手に持っている魔術書は、ぼろぼろになっている。

それは、まさに彼の努力の量を表していた。

ミヤ「結局、練習で一度も成功することができなかったんだ。 だから、少し弱気になっちゃって・・・・・・情けないね、オレ」

○○「魔術書がぼろぼろになるくらい、ミヤは一生懸命練習したんだよね。 だから、もっと自分に自信を持って」

ミヤ「・・・・・・○○ちゃん」

しょんぼりとうな垂れていたミヤが、魔術書をぎゅっと握りしめた。

ミヤ「・・・・・・そうだよね。ルーガも見に来てくれているし、オレ頑張るよ!」

ミヤの瞳に、微かに光が射してくる。

ミヤ「あのさ、○○ちゃん・・・・・・笑ってくれるかな?」

○○「笑う?」

(どうして・・・・・・?)

疑問を抱きながらも、言われるがままに私は笑ってみる。

すると、ミヤもつられるように笑顔になった。

ミヤ「ありがとう、○○ちゃん。 やっぱり、○○ちゃんの笑顔は元気になる。どんな薬より効くね」

(ミヤ・・・・・・)

ミヤが、壁にかけられている時計に視線を移した。

ミヤ「そろそろ、イリアが魔術を披露する頃だね。 ・・・・・・イリアは、どんな魔術をするのかな」

(やっぱり、イリアさんの魔術が気になるのかな?)

私とミヤは、イリアさんの魔術を見るために闘技場へと向かった。

ふと、彼の横顔に視線を移す。

ミヤ「・・・・・・」

ミヤのまつ毛は微かに震えていて、私はそんな彼の隣をただ歩くことしかできなかった・・・-。

 

 

<<月6話||月最終話>>