月5話 ミヤの魔法

ついに魔術の祭典当日になった…―。

イリア「○○様、こちらへ。一緒に来てください」

イリアさんに手を引かれ、私は魔術を披露する舞台が見えやすい場所へと移動する。

イリア「ここからなら、他の誰もいませんし、よく見えますね」

彼に引き寄せられ、肩と肩が触れる。

(なんでだろう……ドキドキする)

胸の鼓動を静めながら、私はイリアさんと一緒に舞台を見つめた。

すると数名が魔術を披露した後、ミヤさんが舞台に上がり……

(わっ……すごい……)

空にいくつもの花火が舞い踊る。

けれど……

イリア「ミヤ? 少し様子が……」

花火は空で大きな爆発に変わり、観客から驚いたような声が上がった。

(これも……演出?)

舞台を見ると、ミヤさんが歯を食いしばっている。

その時…―。

イリア「ミヤ!」

○○「え……?」

イリア「……」

身を乗り出したイリアさんが何かを唱えると、空に水しぶきが上がった。

○○「っ……!」

水しぶきによって爆発は抑えられ、7色の花火が水と遊ぶように跳ねては消えていく。

その美しい光景に、観客から拍手が沸き上がった。

○○「すごい、綺麗ですね……!」

私がミヤさんに拍手を送りながら、イリアさんの方を振り向く。

けれど…―。

イリア「私は……なんてことを……」

彼は瞳を閉じ、手をきつく握りしめていた…―。

 

 

<<第4話||<<太陽SS||月最終話>>