第4話 確かな笑顔

ハクさんと城へと戻った後…ー。

ハクさんの部屋で、うさぎの手当てをすることになった。

(すごい、本がたくさん……)

まるで図書館みたいなハクさんの部屋に、書物の香りが微かに漂っている。

ハク「これでいいだろう」

ハクさんは、慣れた手つきでうさぎの脚に包帯を巻いた。

ハク「お前……完全に治るまで、この部屋にいるか?」

うさぎはその言葉に答えるように、耳をぴくんと動かした。

ハク「わかった……」

ぽつりと言って、ハクさんがそっとうさぎの頭を撫でる。

(よかった……)

○○「ハクさん、ありがとうございました。じゃあ、私はこれで……」

そう言ってハクさんの部屋を出ようとすると……

ハク「おい」

突然に呼び止められて、思わず勢い良く彼の方を振り返ってしまう。

○○「ど、どうしたんですか……?」

ハク「昨日のあれ、また食べたい」

(あれって……?)

今度は私が首を傾げていると、ハクさんが静かに言葉を発した。

ハク「お前が作ってきた、クッキー」

(あっ……)

思いも寄らないハクさんの言葉に、胸が跳ねる。

○○「クッキー、お好きなんですか?」

私の質問に、ハクさんはまた考え込んでしまった。

ハク「これが……好きという感情か? よくわからないが……また、食べたいと思う」

○○「はい……ありがとうございます!」

嬉しくて、大きな声が出てしまう。

ハク「なぜ、礼を言う?」

○○「だって、嬉しくて」

ハク「そうか……」

ハクさんが、静かに微笑んでくれる。

○○「今度は、ドライフルーツも入れてみますね!」

ハク「……ああ、頼む」

ハクさんの部屋を出た後…ー。

(嬉しい……私のクッキーを、気に入ってくれたんだ)

(ハクさんは他に、好きなものはあるのかな?)

ハクさんの微笑みが、私の胸を驚くほどに弾ませていた…ー。

翌日…ー。

私はさっそく、クッキーを作ってハクさんの部屋を訪れた。

(調理場がお借りできて良かった)

ハクさんの部屋をノックしようとすると…ー。

ハク「……」

○○「ハクさん……!」

ドアが静かに開き、ハクさんが姿を見せた。

ハク「……どうした?」

私を見下ろすハクさんの長い髪が、彼の頬にさらりとかかっている。

○○「あの、どこかへ行かれるんですか?」

ハク「本を読みに、森へ行くところだ。 お前も来るか?」

(嬉しい……誘ってくれた……)

○○「はい! ……あ、そうだ」

私は、持ってきたクッキーをハクさんに見せる。

○○「昨日、食べたいって言ってくれてたので……」

ハク「随分、早いんだな」

ハクさんは、今度は確かな笑顔を私に向けてくれた。

胸の奥でトクンと音が鳴る。

(どうしてだろう、ハクさんの笑顔がもっと見たいって思う……)

胸の奥で、甘い感情が生まれ始めていた…ー。

 

 

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