ハクさんの笑顔に、私の胸が大きな音を立てる…ー。
ハク「お前といると不思議だ……いろいろな発見がある。 本には書かれていないことを知ることができる」
○○「え……?」
ハクさんは、真っ直ぐに私を見つめている。
ハク「この気持ちが……楽しい、ということなのだろうか」
(私といることが、楽しい……?)
○○「……そう言っていただけて、嬉しいです。 私も、ハクさんといると楽しいです」
懸命に自分の感情を言葉にしようとしてくれているハクさんに、私も素直に気持ちを伝えた。
ハク「○○……」
ハクさんの綺麗な灰色の瞳に、私の姿が映し出されている。
(胸が……)
胸の奥が甘く締めつけられて、私はそっと胸元を押さえた。
ハク「……」
ハクさんと私は見つめ合ったまま、言葉を紡ぐことをやめた。
時間が止まってしまったかのように感じられた、その時…ー。
ハク「俺は……。 ……いや、何でもない」
何かを言いかけたように思えたけど、彼はまた沈黙してしまった。
(ハクさん……?)
私はその場で、視線を落とすハクさんをじっと見つめていた……
数日後…ー。
助けたうさぎの脚もすっかり治り、森へ帰してあげることにした。
○○「元気でね」
ハクさんが、抱いているうさぎをゆっくりと降ろす。
うさぎは元気よく私達の周りを飛び跳ねて、森の中へと帰って行った。
○○「よかったですね」
ハクさんは私に向き直り、穏やかに笑った。
ハク「これが……嬉しい、だな」
○○「はい……!」
私もつられて笑顔になる。
(ハクさん、笑うことが多くなった……)
彼の笑顔に温かい気持ちで胸がいっぱいになった、その時…ー。
ハク「……!」
突然にハクさんが、私を背中の後ろに隠す。
(ハクさん……?)
ハクさんの大きな背中の向こうから聞こえてきた声は……
盗賊1「よう」
○○「……っ!」
この間、森で私達を襲ってきた男だった。
盗賊1「一人じゃかなわねぇからな。今日は、仲間を連れてきた」
気がつくと、周りに複数人の男達が私達を囲んでいる。
ハク「……」
森の木々が、うるさいくらいにざわめいていた…ー。