第2話 シンヴァの街

茜差す丘で、レオニーが眠りから目覚めた後…-。

彼のおどおどした態度が少し気になるものの、私達はシンヴァの街へ向かうことになった。

街は夕暮れ時のせいか、仕事や学校帰りの人々で賑わっていた。

レオニー「……ん?」

その時、レオニーが目をつむり、鼻をひくつかせた。

〇〇「この甘い香りは……?」

見れば街角に軒を連ねる屋台の中に、おいしそうなクレープ屋がある。

レオニー「…………」

横を振り向けば、レオニーの目はクレープの屋台に釘づけだった。

(お腹が減ってるのかな?)

〇〇「買ってくる?」

レオニー「はあ!? あ、甘いモンなんか、ぜんっぜん好きじゃねえ! オレは、泣く子も黙る…-」

と、目覚めた時と同じ口上を述べようとしたところに…-。

街の人々1「おお、レオニー様だ! レオニー様がお戻りになられた!」

街の人々2「まあ、なんて喜ばしい!」

レオニー「んなっ!?」

レオニーの姿に気づいた街の人々が、あっという間に集まってきた。

しかし、レオニーは目を丸くすると、慌てて私の背に身を隠し、ブラウスの裾を掴む。

レオニー「……っ……!」

目を逸らし口をもごもごと動かすレオニーに……

〇〇「よかったね。皆、レオニーの帰りを待ってたみたい」

街の人々2「ええ、本当によかったです! ねえ、レオニー様」

街の人々1「ずっとお留守だったから、本当に心配してたんですよ」

レオニー「……っそ、そうか……。 よ、ようし……皆、心配かけたな。 オレが戻ってきたからには、もう大丈夫だ! ……多分」

少し頼りない語尾に、集まっていた人々が笑う。

〇〇「レオニーは、皆に慕われているんだね」

街の人々2「ええ、こういうところがレオニー様はかわいらしいですから」

レオニー「う、うるせえっ! かわいいとか言うな!」

噛みつくレオニーを見て、街の人々はみな微笑ましそうに頬を緩める。

しかし、そんな温かな輪のなかで…-。

レオニー「……くそう……勇気さえあれば……」

レオニーがつぶやいた声が、私だけに小さく届いたのだった…-。

 

 

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