月SS あの時以上の勇気

オレが留守にしている間に、幽霊が住み着いてしまったという城に、○○と一緒に戻ってくると…―。

(なんだよあれ、なんだよあれ、なんだよあれ……!!)

城の一室で不気味な人形兵に襲われたオレは、無我夢中で逃げ出した後、気づいた時には中庭にいた。

(怖い……誰か、助けてくれ……)

近くにいた生垣に、震えながら身を隠す。

だけど……

レオニー「ひっ!!」

草を踏みしめるような音に、恐る恐る振り返る。

すると、そこにいたのは……

人形兵「……」

レオニー「あ、ああ、あ……ぎゃああああぁぁー-っ!!」

追いかけてくる人形兵から、オレは転げるように逃げ回る。

(もう嫌だ! オズワルド、ティンプラ……!)

(誰でもいい! 助けてくれよ!!)

絶体絶命の状況に思わず泣き出しそうになった、その時だった。

○○「あっちに行って!」

(え……!?)

人形兵に向かって、○○がスコップを振り下ろす。

(○○……)

小さな体でスコップを振り回す○○は、驚くぐらいカッコよくて……

そんな彼女に恐れをなしたのか、人形兵は慌てたようにどこかへと逃げていった。

(すごい……)

○○「どうかしたの?」

じっと見つめるオレに、○○が不思議そうに尋ねる。

(さっきのアンタ、本当にカッコよかった。だから……)

レオニー「アンタのその勇気、オレにも少しわけてくれよ! 頼む……! オレ、勇気がどうしても欲しいんだ!!」

(オレもアンタみたいになりたい! だから……)

オレはそんな思いを抱きながら、まっすぐに○○を見つめる。

すると……

レオニー「……っ、○○!?」

(えっ? えっ!? なんでこんなこと!?)

突然抱きついてきた彼女に、なぜか心臓が大きく跳ね上がる。

(いったい、どうしたら……)

突然のことに、オレはまばたきを繰り返すことしかできない。

だけど……

(なんだ? この感じ)

(よくわからないけど、なんかが体の奥から湧いてくる)

(そんな感じが、する……)

胸がドキドキして、体が少しずつ熱くなってくる。

(これって、もしかして……)

○○「どう? 勇気……出た?」

(勇気……)

すぐ近くにある○○の顔を、じっと見つめる。

○○「……駄目だった?」

(違う。駄目なわけない)

オレは頭を勢いよく左右に振る。

レオニー「……ううん! そんなことない。 ……体中が熱くて、すごい……! 今ならなんだってできそうだ!!」

(まるで、オズワルドに勇気をもらったあの時みたいに……)

(……いや。あの時以上に、力が湧いてくる!)

○○「……本当?」

レオニー「おう!」

オレは笑って、○○に答える。

レオニー「よし、そうとなれば、あの謎の人形兵を退治しないと。 この城をいつまでもヤツらの思い通りになんてさせないぞ!」

○○「そうだね、でも無理はしない」

レオニー「大丈夫だ!」

(あんなヤツらに、これ以上好き勝手にさせない)

(オレが……王子であるオレが、この城をあいつらから取り戻す!)

オレは自分の胸を拳で思いきり叩きながら、深く頷く。

中庭から見上げた夜の城は、普段だったら逃げ出したくなるぐらい薄気味悪かったけど……

(今夜のオレは違う)

(こんなの、全然怖くない!)

強がりなんかじゃなく、心の底からそう思う。

(それも全部、アンタが勇気をくれたから……)

(……ありがとう)

レオニー「オレが、絶対に守ってやるからな」

○○「えっ?」

オレは○○の手を取ると、城に向かって歩き出す。

(今度は俺が守る番だ)

(勇気をくれたアンタを……オレが必ず守ってやる!)

こうして、失くしてしまった勇気を取り戻したオレは、○○の手をぎゅっと握りながら、まっすぐに城を目指したのだった……―。

 

おわり。

 

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