月7話 勇気をわけて

得体の知れない鳥の鳴き声が響くなか、夜の庭を走り私はレオニーの元へ駆け寄った。

なんとか人形兵を追い払ったはいいけれど、レオニーはすっかり怯えている。

レオニー「うう……も、もう大丈夫なのか? アイツらどこかに消えちまったのか?」

〇〇「うん、大丈夫。レオニー、怪我はない?」

レオニー「あ、ああ……大丈夫だ」

膝についた泥を払い、レオニーが立ち上がる。

その目が感心したように、私に向けられた。

〇〇「どうかしたの?」

レオニー「いや、アンタ、そんな小さいのに、勇敢なんだなって……」

彼は何かを言いたそうに唇を震わせては、私から目を逸らす。

〇〇「レオニー……?」

様子が気になって、名前を呼ぶと……

レオニー「なあ、〇〇……!」

〇〇「え……!? なっ、何!?」

レオニーはいきなり真剣な目になって、私の両肩を揺さぶった。

レオニー「アンタのその勇気、オレにも少しわけてくれよ! 頼む……! オレ、勇気がどうしても欲しいんだ!!」

〇〇「勇気を? でも……」

戸惑いに口元に手をやるが、彼はまっすぐな瞳で私を見つめてくる。

(どうすればいいんだろう、勇気だなんて……)

しばらく考えてみたものの、方法は思い浮かばない。

レオニー「……」

(レオニー……)

すがるように私を見つめるレオニーを、そのままにはしておけなくて……

レオニー「……っ、〇〇!?」

私は、彼の体をそっと抱きしめた。

軽く彼が身動きして、私の腕の中で、驚いたようにまばたきを繰り返す。

しばらくして…―。

〇〇「どう? 勇気……出た?」

軽い抱擁を終えて、至近距離で彼の顔を見上げる。

レオニー「……」

じっと、切れ長の青い瞳が私を見る。

視線を受け止めると、どうしてか心臓が落ち着きを失くして高鳴った。

〇〇「……駄目だった?」

もう一度彼の問うと、ブロンドの頭が勢いよく左右に振られる。

レオニー「……ううん! そんなことない。 ……体中が熱くて、すごい……!今ならなんだってできそうだ!!」

〇〇「……本当?」

レオニー「おう!」

レオニーは、頼りがいのありそうな笑顔を浮かべて私を見る。

その目には、今までにない強い光が宿っていた。

レオニー「よし、そうとなれば、あの謎の人形兵を退治しないと。 この城をいつまでもヤツらの思い通りになんてさせないぞ!」

〇〇「そうだね、でも無理はしないで」

レオニー「大丈夫だ!」

胸を拳で叩いて、レオニーが深く頷く。

こうして私達は、人形兵退治に向かうことになった。

中庭から見上げた夜の城は、得体の知れない薄気味悪さに包まれていた…-。

 

 

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