第4話 山車巡りの先に

作りかけの山車が何台も並ぶ大広間で、オズワルドさんは目を輝かせていた。

オズワルド「トロイメアのお姫様がゲストだなんて、盛大なパレードになるよ。だから特等席は君のもの。いいね?」

オズワルドさんの言動に、知らず胸が高鳴っていることに気づく。

オズワルド「それじゃあ、○○ちゃん。他の山車もたくさんあるから紹介してあげよう」

そう言いながら、オズワルドさんの手が私に差し出される。

○○「……ありがとうございます」

なぜか気恥ずかしさを感じ、控えめにその手を取ると……

○○「っ……!」

オズワルド「広間は広いから、これで移動しよう」

オズワルドさんに再度、ぐっと抱き上げられたかと思えば、機械仕掛けの、スケートボードのような乗り物に二人で飛び乗っていた。

○○「あっ」

体がふわりとボードの上に降ろされ、今度は抱きかかえるように腰に手を回される。

オズワルド「じゃ、出発進行~♪」

すぐさまボードが機械音を鳴らし、滑るようにして広間を移動し始める。

○○「すごい……!」

オズワルド「そりゃどうも。もうだいぶ前に作ったやつだよ」

見上げると、オズワルドさんの顔が間近にあった。

(……っ、私、この乗り物に夢中になってて)

抱き寄せられている体勢であることに今さらながら気づき、頬が急速に熱を持つ。

○○「っ……」

恥ずかしさに、思わずオズワルドさんと距離を取ろうとすると……

オズワルド「っと、危ないよ!」

体勢が崩れそうになり、さらにきつく抱き寄せられてしまった。

(心臓がうるさい……)

加速するスピードと共に鼓動を速めてしまっているうちに、やがてボードは一つの山車の前で停止した。

オズワルド「さてまずは、この山車から紹介しようか。これは蜂の形をあしらったものでね。蜂がぶんぶん、不規則に飛ぶように……くるくる回る仕組みなんだよ。」

黄色と黒で鮮やかにカラーリングされた山車は、たくさんの花で装飾されていた。

○○「わあ……かわいらしいですね」

オズワルド「それからこっちは……パレードの順番を抜かしてしまうせっかち卵だ。」

そのネーミングにくすりと笑うと、オズワルドさんは意図通りといった顔でほくそ笑んだ。

オズワルド「僕らの山車も抜かれちゃうかも。後、ボールのように弾むのが特徴の。掟破りな山車だね」

○○「え? そんな動きで危なくないんですか?」

オズワルド「ふふふ、ちゃんと考慮済みだよ! 当日を楽しみにしてて」

いたずらを思いついた子どものような笑顔を向けられ、私の頬も緩んでしまう。

オズワルド「それにこれは……」

それからも順番にオズワルドさんから山車の説明は続いた。

(楽しいな)

オズワルド「トロイメアのお姫様がゲストだなんて、盛大なパレードになるよ。だから特等席は君のもの。いいね?」

(オズワルドさんが言うなら……)

意気揚々と話し続けるオズワルドさんの帽子についている花が、楽しそうに揺れていた…―。

 

 

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