月7話 これこそが魔法

オズワルド「○○は、もっと僕のことを信用してほしいなあ」

オズワルドさんの楽しそうな声が、大広間に響く…―。

○○「でも、卵だったら割れてしまうんじゃ……」

オズワルド「その卵ね。これだよ、これ」

懐から取り出したものは、色鮮やかに模様のついた卵だった。

○○「感謝祭用の卵ですか?」

オズワルド「その通り! しかも、ただ卵に色を塗ったわけではないよ。この光線銃で撃ってみてごらん!」

○○「え…―」

『光線銃』と呼ばれた……おもちゃの銃のようなものが手渡される。

○○「あ、あの」

戸惑う私には構わず、オズワルドさんは手のひらに鮮やかな卵を乗せ、私から少し距離を取った。

オズワルド「はい、どうぞ!」

(どうぞって……)

○○「卵を撃てばいいんですか?」

オズワルド「うん、どうぞどうぞ」

含みのある顔で、オズワルドさんは私を挑発するように見ている。

(おもちゃの銃だよね? 撃って平気かな……)

オズワルド「だ~か~ら! もっと僕を信用してって!」

なおも迷っていると、卵を持ったオズワルドさんが急かすように声を上げた。

(……よし)

思い切って引き金を引くと……

○○「っ……!」

電子音と共にまばゆい光線が飛び出して、オズワルドさんの手の上の卵に命中した。

その瞬間…―。

○○「え…―」

卵が派手にぱかっと割れたかと思うと、そのまますうっと消えていった。

○○「た、卵が割れて消えて……」

オズワルド「うん! その通りさ」

目の前で起こったことが信じられず、私はただ瞳を瞬かせることしかできない。

オズワルド「これで子ども達は、次々飛び出してくる卵を光線銃で撃って遊べるってわけ。それに、機械仕掛けの消滅卵だから、街は美しいまんま」

○○「すごい……魔法みたい」

その一言を聞いて、オズワルドさんはむっと顔をしかめた。

オズワルド「魔法じゃないって。技術よ、ギジュツ」

街の子ども達が楽しそうに遊ぶ様子が、自然と目に浮かぶ。

オズワルド「あっ、後、安全面も問題なし。もし地面に落ちそうになったり、人に当たりそうになった時も大丈夫。柔らか素材だから」

○○「本当に……当日が楽しみですね!」

オズワルドさんが、くつくつと喉の奥で笑う。

かと思ったら、ぽんと新しい卵を宙へ放り投げ……光線銃で撃ち抜いた。

○○「わぁ……光線銃の光って、少し離れて見るとなんだか綺麗ですね」

オズワルド「それももちろん、計算ずくさ」

自信たっぷりに眼鏡を押し上げながら言う彼の様子に、むねがどきどきと期待の音を鳴らし始める。

(皆がオズワルドさんを慕って、頼りにする理由がわかる。だってこんなに素敵なわくわくをくれるんだから)

オズワルド「さて、本番に向けて最終調整といこうかねぇ」

私から離れ、歩き出そうとするオズワルドさんに……

○○「私にも、お手伝いさせてください!」

魔法にかけられたように、そう声をかけずにはいられなかった…―。

 

 

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