第6話 大案山子一号、起動!

カラスの王達から宣戦布告を受けた翌日…-。

リーヤさんは、性急に計画を進め始めた。

リーヤ「クソ……っ、不本意だけど、オズワルドの野郎の手を借りたいくらいだぜ」

悔しげにつぶやきを落としつつ、リーヤさんは分厚い本をめくったり、猛烈な勢いで計算式を殴り書きしたりしている。

(カラスの一族が何か起こす前に、なんとかしないと)

私もその一心で、リーヤさんの手伝いをしていた、その時だった。

執事「しっ、失礼しますっ! リーヤ様っ」

リーヤ「あーっ、うっせーな! 今はそれどころじゃねーんだよ」

血相を変えて、執事さんが部屋に飛び込んできた。

執事「し、しかしリーヤ様!街が……っ」

リーヤ「街が……なんだと?」

迷惑そうにしていたリーヤさんが、手を止めて真剣な顔で振り返る。

執事「ま、街が、カラスの大群に襲われていると……! 街だけでなく、田んぼも家も、大惨事だと……!」

リーヤ「あいつら……」

(そんな、ひどい……)

どんな因縁がこれまであったにせよ、リーヤさん側は何も攻撃してなどいない。

それなのに……

リーヤ「こうなったら……。 こうなったらっ、大案山子一号を起動させるしかねえっ!」

〇〇「だい……かかし?」

(そんな名前だったんだ……)

リーヤ「まだ未完成だが……仕方ねえ!」

リーヤさんが、まだ完成途中の城型大案山子の、ねじを緩め、起動チェックを始める。

〇〇「リーヤさん、でもまだ危険では……!」

リーヤ「けど、今使わなくてどうすんだよ!」

鬼気迫るリーヤさんの様子に、それ以上何も言えなくなった。

……

かくして私達は、大案山子一号の最終点検を終えた。

リーヤさんが力強く、部屋にある起動スイッチを握りしめる。

リーヤ「急に起動させることになっちまったけど……ここまでの計算は完璧だ」

〇〇「はい、きっと大丈夫です」

リーヤさんの瞳が、私の視線を捕らえる。

計画を進める中で、幾度も輝いた知的な瞳の煌めき……

私の力はとても微力だけれど、二人で頑張ってきた感覚はとても強くて……

(お願い……無事に動いて!)

リーヤさんが、私の手を取り、起動スイッチに手を重ねる。

リーヤ「一緒に、押してくれるだろ?」

こくりと生唾を飲み込む音さえ聞こえそうな緊張感の中、リーヤさんの熱っぽい手と、無機質なスイッチの感覚を手に感じる。

〇〇「はい」

リーヤ「大案山子一号、起動…-!!」

がつんとスイッチが押し込まれる、確かな感触……

床が激しく揺れた。

リーヤ「〇〇……!」

リーヤさんが、肩を抱きすくめてくれたその時……

作り上げた案山子は、確かに起動したのだった…-。

 

 

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