太陽5話 悲しげな瞳

ピアノの旋律が、切なく室内に響いている…―。

ジェイ「ああ、いや……君をもてなしたいと思って声をかけたつもりだったんだ。だけど、俺は…―」

どこか悲しげな色を瞳に湛えながら、ジェイさんが、言葉を続ける。

ジェイ「俺は……自分が寂しかったのに、それを素直に君に言えずにいて……」

整った美しい指でグラスを軽く揺らしながら、ジェイさんは静かに微笑む。

ジェイ「短い時間ではあるけど、君と同じ時間を過ごすことができて、幸せだった。 本当に、ありがとう」

私の頬に触れていた手のひらが、そっと離れていく。

(ジェイさん……)

なんて言葉をかけたらいいのかと、考えあぐねていると……

ジェイ「……そろそろ、お開きにしようか」

つぶやきにも似た小さな声で、ジェイさんはそう言った。

(でも、やっぱり寂しそうな目をしてる……)

ジェイさんとは、夜の間しか一緒に過ごすことはできない。

私が部屋に戻り、眠りに就いた後……一人きりで静かな時間を過ごし続けるジェイさんを想像する。

(胸が痛い……)

ジェイ「さあ、行こう」

○○「あ……」

私が口を開いた時には、もう遅く……

立ち上がったジェイさんに声をかけそびれたまま、私は彼の後を追うことしかできなかった…―。

バーを出て、エレベーターホールまでやってきた時…―。

ジェイ「……」

先ほどから無言のまま、ジェイさんは歩き続けていたけれど…―。

ジェイ「……何か、言いたそうな顔だね?」

○○「え? あ、その……」

突然そう尋ねられ、胸がドキリと跳ねる。

(ジェイさんに、伝えたい)

(もっと、一緒にいたいって……)

○○「あの…―」

言いかけた私を、ジェイさんの言葉が再び遮った。

ジェイ「いや……言わなければならないのは、俺の方かな」

形のいい唇が、ゆっくりとそう言葉を紡いだ…―。

 

 

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