太陽7話 白い花

翌日…-。

レイヴンさんにお願いして、私達はクローディアス君を連れてピクニックに出かけていた。

クローディアス「とってもいい天気だね」

〇〇「本当。すごく気持ちがいいね」

レイヴン「クロード、いい天気ですね? だろう」

レイヴンさんが言葉を正すと、クローディアス君が頬を膨らませる。

ほのぼのとした光景に、束の間目を細める。

クローディアス「お兄さま、そんなことより、おいかけっこしよう? ぼくをつかまえられたら、いい天気ですねってちゃんと言うよ!」

そう言うなり、クローディアス君が走り出す。

レイヴン「こら! クロードっ」

私に微かに笑いかけ、レイヴンさんがクローディアス君を追って走り出した。

クローディアス「きゃはは、こっちだよ~、お兄さまっ」

レイヴン「よ~し」

(二人とも、楽しそう)

しばらくして捕まりそうになると、クローディアス君が私のスカートの後ろに隠れる。

レイヴン「ほら、観念して出てきなさい」

クローディアス「やだっ」

クローディアス君にスカートを引かれ、身体がぐらりとバランスを崩す。

レイヴン「危ない……っ」

レイヴンさんが、私の腰に手を回し、私達二人を抱くような形で倒れ込む。

花の絨毯の上で、私達はしばし空を見上げ黙り込んだ。

レイヴン「……」

レイヴンさんが笑い出す。

レイヴン「……は……ははは!」

つられて私とクローディアス君も笑い、花畑にはしばらく、3人の笑い声が響いた。

レイヴン「……こんな風に笑ったのは、いつ以来だろう」

ひとしきり笑うと、彼は笑った自分を悔いるかのように瞳を閉じる。

レイヴン「失礼。もう、帰らなければ……」

クローディアス「どうして? もう少しいたい」

レイヴン「……駄目だ」

立ち去ろうとして、レイヴンさんは思い出したように白い花を摘み始める。

(パーティーで、オフィーリアさんの席に添えられてたお花だ……)

〇〇「レイヴンさん……」

まるで償いのように、必死に取りすがっているように、彼は白い花を摘み続ける。

(これ以上、声をかけられない……)

クローディアス「……!」

その時、クローディアス君が、白い花を手当たり次第にむしり始めた。

レイヴン「……クロード、何してる?」

レイヴンさんの呼びかけにも応じず、クローディアス君は花をめちゃくちゃにし続ける。

レイヴン「やめろ……。 やめろと言ってるんだ!」

クローディアス君を突き飛ばさんばかりの勢いで、レイヴンさんが声を荒げる。

私は何をすることもできず、ただ立ち尽くしていた。

クローディアス「ぼく、白いお花なんてきらい……。 白いお花はお兄さまを遠くに連れていってしまうから、きらいだよ……」

クローディアス君が、声をあげて泣き始める。

レイヴン「クロード……」

小さくうずくまった影を抱きしめようと手を伸ばしたけれど……

その手を力なく降ろし、レイヴンさんは、城の方へと独りで帰ってしまった。

〇〇「クローディアス君……」

私は、残されたクローディアス君を抱きしめることしかできない。

クローディアス「オフィーリアお姉さまは……お兄さまを連れていってしまうの? 〇〇さま、助けて……助けてください……ぼく、うんといい子になりますから」

小さな手の中の白い花が、ただ、悲しい。

澄み切った空を見上げ、私はそっと涙を飲み込んだ…-。

 

 

 

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