太陽8話 やすらかな寝息

それから数日後…-。

内通者達が取り押さえられ、城には再び平和が訪れた。

あの日から私は、ユリウスさんと会っていない。

(怪我、大丈夫なのかな)

ユリウスさんの怪我を思い出すと、不安で胸がいっぱいになる。

その時…-。

執事「〇〇様! ユリウス様を、見かけませんでしたか?」

〇〇「え……?」

執事「まだ安静にしなければならないのですが、ベッドを抜け出してしまわれて……」

〇〇「そんな…-」

慌てる執事さんを見ながら、心当たりの場所を思い浮かべる。

(もしかして……)

……

中庭の隅を覗くと…-。

(やっぱり……)

剣の素振りをする、ユリウスさんの姿があった。

〇〇「ユリウスさん、怪我の具合は……」

ユリウス「〇〇……」

前はすぐに私に気づいたユリウスさんだったけれど、今日は声をかけるまで気づかなかった。

〇〇「駄目ですよ。まだ執事さんが安静にと」

ユリウス「心配ねーよ。こんなもん、怪我のうちに入らねぇ」

〇〇「でも……」

ユリウス「うるせーな……お前を危ない目に遭わせたのが情けねぇんだよ」

〇〇「え……?」

その時突然、ユリウスさんの体がよろめいた。

(やっぱり、怪我が……!)

私は、ユリウスさんの体をなんとか支える。

その顔色は蒼白で、私は思わず息を呑んだ。

〇〇「戻りましょう。無理しないでください。 お願いですから……」

必死に言い募ると、ユリウスさんが瞳を閉じる。

ユリウス「……ったく、わかったよ」

……

ユリウスさんを部屋まで運び、傷の手当てを終わらせた頃には、もう夜の帳が下りていた。

〇〇「もう抜け出したりしないでくださいね」

(こんなに青い顔をして……)

ユリウス「……お前のせいだぞ」

〇〇「えっ……?」

ユリウスさんは、深いため息を吐いた。

ユリウス「オレは戦争からずっと、常に周りを警戒してきた。 誰かに襲われるんじゃないかって、緊張して……夜もろくに寝れなかった」

ユリウスさんはふっと笑った。

ユリウス「なのにお前と会ってから、その緊張が緩んじまったらしい」

(ユリウスさん……)

ユリウス「お前といると……すげぇ安心するんだ」

そう言ってユリウスさんは、私の頬に手を触れる。

(……大きな手)

熱を帯びた彼の手に、私もそっと自分の手を重ねた。

ユリウスさんが静かに瞳を閉じる。

ユリウス「オレは…-」

〇〇「……?」

突然に言葉が途切れ、私は彼の顔を覗き込む。

〇〇「……無理するから」

静かな寝息を立てて、ユリウスさんは眠り込んでいた。

(穏やかな顔……)

(私がいて、ユリウスさんが安らぐことができるなら)

(ずっと、傍にいてあげたい……)

そんなことを思いながら、私は彼の手をぎゅっと握った…-。

 

 

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