ユリウスさんの後ろ姿が遠ざかっていく…-。
〇〇「ユリウスさん……っ! 待ってください」
私が声をかけると、ユリウスさんは立ち止まってこちらを振り向いた。
ユリウス「……何だよ」
(思わず追いかけてきちゃった……どうしよう)
ユリウス「何もねぇなら、行くぞ」
ユリウスさんが、私にまた背を向ける。
〇〇「あの……!」
胸の中で必死に、彼にかける言葉を探す。
〇〇「あの……また一緒に香りをつくりませんか? この前摘んだお花もたくさんあるし」
ゆっくりとこちらを振り向いて、彼は静かに息を吸った。
ユリウス「……悪いけど、今そういう気分じゃねぇんだ」
ユリウスさんに冷たく言われ、私の胸がズキンと痛む。
ユリウス「内通者が出たことで、城内がざわついている。 呼んどいて悪いが……お前も、明日帰ってもらうように手配したから」
〇〇「……っ!」
ユリウス「危ない目に遭わせて、済まなかった」
ユリウスさんの声はとても苦しそうで、私は思わずその瞳を覗き込む。
〇〇「そんな青い顔をしたユリウスさんを置いて……帰れません」
ユリウス「バカ野郎!」
ユリウスさんの大声に、びくんと体が震える。
ユリウス「お前が殺されそうになって……オレどんな気持ちだったか……。 それに……このままお前といると、オレ自身がお前を傷つけるかもしれない」
(えっ……?)
ユリウス「気が気でないんだ。近づく奴全部、敵に思えて…-。 オレは、怖い。無邪気にオレの近くにいるお前を、いつ傷つけるか…-。 もう前みたいに……お前の近くにはいられない」
(そんな……)
ユリウス「いいな。早いとこ、帰れよ」
彼はなおも冷たく言い放ち、今度こそ歩いて行ってしまった。
一人取り残された私の頬に、冷たい風が吹きつける。
一筋の涙が頬を伝った…-。