第4話 一緒に行こうな

晴天の空はいつしか雲に覆われ、降り注いでいた太陽の光も薄らいでいる。

その空を仰ぎ見ながら、陽影さんが、彼にしては小さな声で話し出した。

陽影「オレ、さ…―。小さな頃から思い込むとそれ一直線で周りが見えなくなるんだ。 だからいい奴だなって思うと、力になってやりたくなって……だけどオレはこの通りの人間だし。 嘘とかお世辞とか上手く言えねーから、良かれと思って、結局いつも傷つけちまう……」

〇〇「女の子を、ですか……?」

陽影「いや、女に限らず、つるんでくれる連中も子どもも……多分親父に素直になれねーのも同じだな」

決まりが悪そうに頭を掻きながら、陽影さんは話を続ける。

陽影「女はちょっと苦手だけど。小さくて細くて繊細そうだし……なんかやわっこいだろ。 だから、オレみたいのが本気で恋とかしたら、相手のこと壊しそうで……怖いんだよ」

(そんなこと思ってたんだ……)

意外な一面に、私の胸がきゅっとする。

私は……

〇〇「そんなことないと思いますけど」

陽影「なんで?」

〇〇「街の皆さんは、陽影さんのことが好きみたいでしたから」

陽影さんは片目を歪めて、喉を鳴らす。

〇〇「……?」

(私、何か笑われるようなこと、言ったかな?)

陽影「っ、なんなのオマエ。でも……そうだな、きっといい奴なんだなってことは、わかった。 な、改めてよろしくな、〇〇」

(あ……)

陽影さんはすっと、日に焼けた小麦色の腕を差し出す。

〇〇「よろしくお願いします」

嬉しさに、にっこりと笑って彼の逞しい手を取る。

陽影「ああ!」

〇〇「……っ」

ぐっと力をこめて腕を引き寄せられて、肩を組まれる。

カッと熱を帯びた頬で、彼を見上げると……

(いつもの笑顔が戻ってる)

いつの間にか天に差した雲は消えて、真夏の太陽が陽影さんを照らしている。

陽影「また今度、祭一緒に回ろうな。特に最終日のフィナーレの花火は最高にキレーだから。 それに……」

〇〇「……?」

陽影「やっぱいいや、なんでもない」

陽影さんは私と目が合うと、誤魔化すように白い歯を見せて笑った。

再び顔を見せた太陽の光によって、辺りはいっそう明るく照らされていた…―。

 

 

<<第3話||第5話>>