第1話 いたずらウサギ

不思議の国・ワンダーメア マーチブロー…―。

深い森の奥で、一人の王子を目覚めさせたのは今からちょうど一週間前。

私はその時に目覚めさせた王子、マーチアさんに招待され、マーチブローの城を訪れていた。

(確か、招待状には中庭にいるって書いてあったよね)

中庭へ足を運ぶと、真っ白なテーブルチェアの上に、様々なお菓子や紅茶が用意されていた。

マーチア「やあやあ、遠いところからよく来てくれたね! ささ、この椅子に座って」

長く垂れた耳を手で弄びながら、マーチアさんが元気よく私を迎えてくれた。

〇〇「えっと……」

マーチア「遠慮することなんてないでしょう? 今日は君との再会を楽しむお茶会なんだから。 いつもつるんでる悪友達から、君がトロイメアのお姫様だって聞いて楽しみにしてたんだよ」

八重歯を見せて、マーチアさんは手にしたカップに紅茶を注ぐ。

〇〇「ありがとうござ…―っ!?」

突然…―。

手渡されたカップから小鳥が飛び立ち、私は驚いて肩を揺らした。

マーチア「へへ、驚いた? ねえ、今の驚いた!?」

にんまりと笑い、別のカップに新たに紅茶を注ぎ始める。

(びっくりした……手品か何かだったのかな)

(この人が、三月ウサギたちの集落をまとめる、この国の王子?)

マーチア「いやぁ、あのトロイメアのお姫様が第二のアリスだなんてビックリだよね。うん、ほんとビックリ」

〇〇「……私が、アリス?」

マーチア「そうそう、昔このワンダーメアに表れたって言う、言い伝えの少女……って何その顔。 あれ? もしかして……違うの!?」

〇〇「私はアリスではなく、〇〇ですが……」

マーチア「……!?」

その瞬間、マーチアさんは口をあんぐりと開き、手にしていたポットを地面に落とした…―。

 

 

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