第2話 愛を伝えるギフト

愛の日に向け、賑わいを見せるショコルーナ…―。

招かれた城で再会したジョシュアさんが、私に向かって微笑んだ。

ジョシュア「それで、この後の予定はあるの?」

○○「せっかくですから、街を見て回ろうかと」

赤やピンクのハートで飾られた街並みは、それだけで私の心をくすぐる。

ジョシュア「それなら、オレと一緒に街のショコラショップを回らない?」

○○「ぜひ、ご一緒させてください」

そう答えると、ジョシュアさんがふわりと目元を和ませる。

ジョシュア「一人で視察っていうのも、味気ないからね」

照れ混じりに頷くと、ジョシュアさんも満足そうに笑みを深める。

ジョシュア「世間知らずの姫君を… ちゃんとエスコートしてあげないとね」

口調は少し意地悪なのに、その声色はとても優しく感じられた…―。


……

街に着き、大通りへ向かうと…―。

(えっ……)

想像以上の人出に驚き、私は目を瞬かせた。

○○「世界中から人が集まっているとは聞いていましたが…… すごい人ですね」

ジョシュア「国をあげて、チョコレートを愛の日のギフトにと謳っているからね」

ジョシュアさんは、この混雑も想定内だったようだ。

(本当にすごい人…… 大丈夫かな)

この混雑が、私にデパートで行われるバレンタインフェアを思い出させる。

ジョシュア「顔が強張っているよ。いつでも優雅に、笑みを絶やさないこと」

ジョシュアさんの言葉にはっとして、私は姿勢を正す。

ジョシュア「それでいい」

柔らかな声を笑顔に乗せ、ジョシュアさんがそっと手を差し出した。

ジョシュア「姫。迷子にならないように、お手をどうぞ」

ジョシュアさんのスマートな仕草に、胸が小さく音を立てる。

○○「ありがとうございます」

(ジョシュアさんが一緒なら大丈夫だよね)

その手を取ると、ジョシュアさんはゆっくりと歩みを進めた。

ジョシュア「それにしても……。 王子の提案らしいけど、これだけの人を集めるなんて」

賑わう街を眺め、ジョシュアさんが独り言のようにつぶやく。

ジョシュア「少し悔しくもあるけど…… チョコレートの国の王子はすごいね」

○○「では、ジョシュアさんも、ベルガモントで大規模のティーパーティーを開くとか?」

私の言葉に、ジョシュアさんは楽しげな笑みを浮かべる。

ジョシュア「君も言うようになったね」

そう言いながら、ジョシュアさんは悪戯に私の手をぐっと引いた。

○○「っ……」

よろけた拍子に距離が近づき、ジョシュアさんの腕に触れる。

(あ…… 紅茶の香りが……)

ふわりと漂ったその香りにドキリとしていると、ジョシュアさんの手が私を支えるように腰へ回り、傍にあった、ショコラショップのショーウィンドウへと誘った。

ジョシュア「見てごらん。こういう洋酒入りのチョコレートには、アップルティーが合うんだよ」

○○「そ、そうなんですね……」

胸がどうしようなく高鳴ってら気づけば縮こまりそうになる体を伸ばす。

ジョシュアさんに怒られないように、彼の傍にいるのに相応しい振る舞いをしたいと……

そんなことを思いながら…ー。

 

 

 

<<第1話||第3話>>