第4話 男の子の悩み

素敵なジンクスのある、割れたハート型のチョコレートを食べた後…-。

私達は再び、街の賑わいの中へと戻っていった。

(クレト君、近い……)

隣を見ると、クレト君の顔が間近にある。

繋いだ手から伝わる彼の温度が、さっきよりも私の胸を甘くざわめかせた。

(ジンクスの効果……なのかな?)

そんなことを思っていると…-。

クレト「あっちの伝統のある店にも行ってみよう! きっと、特別なチョコレートを仕込んでいるはず」

〇〇「あ……うんっ」

(あれ……)

彼の手に引かれながら、私はあることを思い出す。

(クレト君が楽しそうなのは嬉しいけど、私達が街に来た目的って……)

クレト「ああ……いろんなチョコレートを味わえて嬉しいな。 〇〇も一緒にいてくれるし……ね」

照れたような表情を浮かべながら、クレト君は微笑む。

クレト「ああ、すごく楽しいな~……」

〇〇「うん、楽しいね。けれど、クレト君…-」

クレト君に声をかけた、その時…-。

クレト「って! 楽しんでる場合じゃないって! 俺! 楽しすぎて……本来の目的を忘れてた……!」

(思い出してくれたみたい)

クレト君は、愛の日に向けて何かをしたいと考えていて…-。

いいアイディアを探すために、私達は街を歩いていた。

その目的を忘れていたことに気を落とすクレト君を見て……

がっくりと肩を落とす彼に、私は明るく声をかける。

〇〇「ね、クレト君。今からでも遅くないよ。一緒に考えよう」

クレト「……ありがとう、〇〇。よしっ! 俺、今からちゃんと考えるから!」

クレト君は、両頬をパンッと叩いて気合を入れる。

クレト「よしっ、あっちのほうも見てみよう!」

〇〇「うん!」

そして向かった先の店で……

クレト「へ~、店の飾りつけもこってるんだな」

ハート形のライトや風船が飾られていて、愛の日の雰囲気を演出していた。

店主3「そりゃそうですよ、クレト王子!雰囲気ってのは大事ですからね」

クレト「なるほど……雰囲気か」

クレト君は顎に手を当てて、考え込む。

けれど、その表情は晴れないものだった…-。

……

街中の店を一通り見終わった頃には、太陽が傾いていた。

私達は広場のベンチに腰をおろし、休憩をとる。

クレト「あー、後少しで掴めそうなんだけどな……」

クレト君は大きなため息を吐き、うなだれてしまった。

(どうしよう、何かいいアイディアはないかな)

悩んでいるクレト君に、何かアドバイスができないか考えていると…-。

??「はあ……」

〇〇「……!?」

すぐ近くで、誰かのため息が聞こえてくる。

(今のため息は、クレト君じゃないし……)

ため息が聞こえた方を見てみると……

(小さな……男の子?)

クレト君と同じようにうなだれている男の子が、隣のベンチに座っていた。

クレト「ん? 君も何か悩んでいるの?」

クレト君はすかさず、その男の子に声をかける。

男の子「ク、クレト王子!?」

クレト「どうしたんだ? 悩みがあるなら言ってみようよ。スッキリするよ!」

クレト君が優しく背中を押すと、男の子は意を決したように話し出した。

男の子「クレト王子……っ! その……好きな子にチョコレートを贈りたいんですけど……。 どのチョコレートを選べば気持ちが伝わるのかわからなくて」

男の子のまっすぐな眼差しから、その真剣さが伝わってくる…-。

クレト「好きな子に贈るチョコレートか……」

傾いていた夕陽に照らされながら、私達は一生懸命考えた…-。

 

 

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