記録の国・レコルド 星の月…-。
世界中のあらゆる記録を管理する国、レコルド…-。
(不思議……近代的なようで、それでいて古風な建物がたくさん)
神秘的な街並みを見渡しながら、私は眠りから目覚めさせたフォルカー王子を訪ねた。
立派な城へ到着するとすぐに、すらりと長身の王子が出迎えてくれて……
フォルカー「〇〇姫。記録の国、レコルドへようこそ。 長い道中だっただろうけど、来てくれて嬉しい。歓迎しよう」
流麗にお辞儀をするさまは、ドキリとしてしまうほどに洗練されていて美しかった。
〇〇「お招きくださってありがとうございます」
フォルカー「姫の案内は俺がすることになっている。何かあれば、遠慮なく言って欲しい」
〇〇「ありがとうございます」
(穏やかな雰囲気の人……)
柔らかに揺れる髪と、綺麗に細められた瞳に思わず見入ってしまう。
けれど…―。
フォルカー「では早速」
挨拶もそこそこに、フォルカーさんは姿勢を正し、淡々とした声色で話し始めた。
フォルカー「この国について説明しよう」
不思議な彩りを見せる彼の瞳が、今は見えない城の外へ向けられる。
(なんだか、いきなり雰囲気が変わったような……?)
その所作が、どこか淡白なものに感じられた。
フォルカー「この国は、世界中の記録を司る国で、俺は魔法に関する記録を担当している。 世界各地のあらゆる魔法が、ここに記されていくんだ」
(記されていく? どういうこと……?)
言葉の意味がわからず、私は首を傾げる。
すると、そんな私を見てフォルカーさんはすかさず口を開いた。
フォルカー「特殊な石板へ自動的に記録されていく。その管理を行うのが王子の重要な役割だ」
〇〇「自動的に……! それにしても、世界中からなんて大変そうですね」
フォルカー「これが我々に与えられた使命だ。俺はその国の王子であり、責任者でもある」
フォルカーさんの表情が、さらに厳しく引き締められる。
(……仕事に対して、本当に真面目な人なんだ)
やや緊張しつつも、私は彼の話に耳を傾けた。
けれどすぐに…-。
フォルカー「我々の仕事について話していても……〇〇姫には退屈だな。 ……それより、城を案内しよう」
フォルカーさんが不意に話を中断し、そっと私の背に手を添えた。
〇〇「!」
急に感じた熱に、思わず体を震わせてしまう。
フォルカー「さあ、行こう」
彼に促されるまま、私は城の廊下を歩き出した。
(……気を使ってもらったのかな?)
疑問に思ったものの、険しさの滲んだ横顔に、それ以上話しかけることはできなかった…-。