第5話 ベリー畑で

コロレさんと、ベリー畑を見に行くと約束した当日…―。

空は快晴で、気持ちのいい日よりに恵まれた。

コロレ「ここが、僕の国のベリー畑だよ」

○○「わあ……!」

一面に広がる緑と、赤や濃い黒色のベリー畑に、感嘆の声が漏れた。

すふれ「わんわんっ!」

コロレさんの相棒すふれも、嬉しそうに尻尾を振って駆け出す。

立ちこめる甘酸っぱい香りが風に含まれて、とても清々しい。

コロレ「どうかな? 僕達の大切にしているベリー畑!」

○○「……言葉になりません」

広大で美しい光景に胸を打たれていると、コロレさんは満足そうに頷いた。

コロレ「最高の褒め言葉だね。 おいで、ベリーのこと、もっと教えてあげる」

コロレさんがさりげなく、そっと私の背中を押す。

背中の布越しだけれど伝わる手のひらの温もりに鼓動が跳ねた。

コロレ「この畑にあるベリーは、ラズベリーなんだ。一般的には赤と黒が多いけど、黄色もあるんだよ」

○○「え、そうなんですか?」

コロレ「うん、イエローラズベリーは収穫時期が少しずれるからまだここにはないけど……。 うーん、翌々月から実り始めて、畑が黄色に染まるよ」

(黄色いラズベリー……見てみたかったな)

○○「そうなんですね……残念です」

コロレ「あっ、そうか。ごめんね……」

○○「え……?」

不意に、コロレさんが哀しげに眉を下げる。

コロレ「貴方がずっとこの国にいるわけじゃないのに……僕……」

○○「っ……! い、いえ、そんな。気にしないでください」

コロレ「本当にごめんね? 僕がもしまた心ないことを言ってしまったら、注意してくれていいからね?」

○○「ありがとうございます……でも、本当に大丈夫です」

そう心から伝えれば、ようやくコロレさんの顔が和らいだ。

(マイペースな人かと思ったら……繊細で優しい一面もあって)

(なんだかコロレさんの傍にいると、心が温かくなるみたい)

コロレ「○○さん、ベリーを収穫してみようか。せっかくだから!」

○○「はい!」

すふれ「わんっ!」

それから私達は、ベリー畑で楽しいひとときを過ごしたのだった…―。

……

空がオレンジ色に染まる頃、ようやく帰路につくことにした。

コロレ「長い時間、楽しんでしまったね。すっかり、日が暮れてしまった」

はにかむようにコロレさんは言って、私の顔を優しく見やる。

夕日に照らされた頬は心なしか赤く、瞳は橙色に輝いていた。

○○「とても楽しかったです。今日は本当にありがとうございました」

お礼を言ったその時…―。

コロレ「○○さんっ!」

○○「え……っ!!」

私の体が、突然コロレさんの腕に抱え込まれた…―。

 

 

 

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