目の前に差し出されたとても綺麗でおいしそうなケーキに、思わず目が釘づけになってしまう。
(いろんな種類のベリーがのってて、カラフルだなあ)
(見てるだけで、ワクワクしてくる)
瑞々しいベリーが彩るケーキを見て、胸を躍らせていると……
コロレ「ふふっ、喜んでもらえてるみたいだ。よかった」
○○「っ……!」
(そんなに顔に出てたかな? 恥ずかしい……)
コロレ「おいしそうだよね。僕も早く食べたいんだ! すぐにお茶を用意してくるから、少し待っててね?」
執事「コロレ様、では私が……」
コロレ「ううん、大丈夫。僕がこのケーキに合う茶葉を選んであげたいから」
コロレさんは、最後にまたふわりと微笑んで、部屋を出て行った。
…
……
それからしばらく待っていたけれど、30分過ぎても戻ってくる様子がない。
(何かあったのかな……?)
私は、コロレさんがいるはずの調理場へ向かってみることにした。
調理場を覗いてみると……
(あれ……?)
コロレさんは、何やら真剣な様子でメモを取っていた。
時折、耳たぶを触り考えを巡らせている様子だ。
(声をかけて……大丈夫かな?)
(真剣みたいだから、今は声をかけない方がいいかな……)
そう思ってじっと見つめていると……
コロレ「……ん? ○○さん! 気づかなくてごめんね」
○○「いえ……」
コロレさんは、少し申し訳なさそうに微笑んだ。
コロレ「あー……時間、かかっちゃってたよね。ごめんね」
掛け時計を見ると、コロレさんは慌てて茶葉の詰まった瓶を手に持つ。
○○「何をされてたんですか?」
コロレ「ああ、えっと……どの紅茶がいいか選んでいたら。 新作レシピというか、アイディアが浮かんじゃって……」
コロレさんは眉を下げながら、メモをしていた紙をひらりと見せてくれる。
○○「そうだったんですか」
コロレ「うん、でももう大丈夫。メモしたから。 だからえっと、飲み物だよね。今回のケーキには軽い口当たりの茶葉で……。 あ、あと、お皿も。君とケーキと両方に合うお皿を探したいし……」
どこかのんびりとした様子で、コロレさんは厨房の中を歩き回る。
コロレ「えっと、これがいいかな。それとも……」
しばらくすると、茶葉の瓶を手に持ったまま、今度はお皿をじっと見つめ始めた。
(ふふ……見てるだけで、なんだか癒されるな)
○○「コロレさんって……マイペースって言われませんか?」
コロレ「えっ……?」
綺麗なアーモンド形の瞳が、丸く見開かれる。
それからみるみるうちに、顔が真っ赤に染まって……
コロレ「あ……うん、そうなんだ。 僕はえっと……よく、マイペースって言われることがあって……っ」
(コロレさん……照れてる?)
背が高いコロレさんの、頬を染めて恥じらう姿はとても可愛らしくて……
○○「私はマイペースなのも、いいと思います」
コロレ「えっ、本当?」
○○「はい」
コロレさんの表情が、まるでチョコレートが蕩けるみたいに柔らかくほころぶ。
コロレ「ふふっ、直さなきゃいけないかなって思ってたけど……。 あっ、でもあとっ、これ。照れちゃうとすぐ顔が赤くなるのも……癖……なんだ」
(やっぱり、可愛い……)
またすぐに気恥ずかしそうに赤い頬に手を当てるコロレさんに、私もつられるように頬が火照るような心地になるのだった…―。