愛の日一色の街を、今日はデートだと言うアンタレスさんと一緒に歩く。
(ちょっと気恥ずかしいな……)
アンタレスさんからもらった薔薇の花からは、優しくて甘い香りが立ち上り、街中から溢れているチョコレートの香りと混ざり合っている。
アンタレス「評判のいいバーを聞いておいた。そこに行くからな」
〇〇「はい、ありがとうございます」
アンタレス「アンタは、チョコは好きか? チョコレートが有名な店に行くぞ」
〇〇「はい! 大好きです」
素直に答えれば、私をじっと見つめるアンタレスさんの瞳と視線がぶつかった。
アンタレス「今日の服、似合っているな。なかなかセンスがいい」
〇〇「……!」
(なんだか……センスのいいアンタレスさんに言われると、恥ずかしいな)
(でも、嬉しい……)
〇〇「ありがとうございます」
思わず頬の力が緩んでしまう。
はにかみながら、アンタレスさんを見上げると……
アンタレス「っ……」
〇〇「アンタレスさん……?」
ほんのりと頬が染まって見える無言のアンタレスさんが目に入り、不思議に感じて呼びかけた。
アンタレス「い、いや……。 アンタのそういうとこ、ずるいよな……無邪気すぎる」
〇〇「え……?」
やはりよくわからずに、再度首を傾げると、アンタレスさんは困ったように首をゆるく左右に振った。
アンタレス「何でもない。気にするな」
ぽん、と優しく頭に手を置かれたかと思えば、すぐに離れていく。
とくんと疼きのような胸の高鳴りと共に、アンタレスさんの香りが鼻先をくすぐった。
アンタレス「しかし、メイクは相変わらずだな。服はいいが、メイクはナチュラルすぎる」
そう言われて私は……
〇〇「……いつも、これくらいなので……」
アンタレス「だろうな。けど、おしゃれする時には、メイクも重要だ。 俺に任せておけ。肌が綺麗だからメイクはとびきり映えるはずだ」
アンタレスさんはそう言って、私の頬を確かめるようにそっと撫でた。
アンタレス「アンタ、素材が最高だからな」
アンタレスさんは、今一度私のことを頭のてっぺんから足の先まで見やると、改めて満足そうに微笑んだのだった…-。