第2話 褒め言葉

愛の日一色の街を、今日はデートだと言うアンタレスさんと一緒に歩く。

(ちょっと気恥ずかしいな……)

アンタレスさんからもらった薔薇の花からは、優しくて甘い香りが立ち上り、街中から溢れているチョコレートの香りと混ざり合っている。

アンタレス「評判のいいバーを聞いておいた。そこに行くからな」

〇〇「はい、ありがとうございます」

アンタレス「アンタは、チョコは好きか? チョコレートが有名な店に行くぞ」

〇〇「はい! 大好きです」

素直に答えれば、私をじっと見つめるアンタレスさんの瞳と視線がぶつかった。

アンタレス「今日の服、似合っているな。なかなかセンスがいい」

〇〇「……!」

(なんだか……センスのいいアンタレスさんに言われると、恥ずかしいな)

(でも、嬉しい……)

〇〇「ありがとうございます」

思わず頬の力が緩んでしまう。

はにかみながら、アンタレスさんを見上げると……

アンタレス「っ……」

〇〇「アンタレスさん……?」

ほんのりと頬が染まって見える無言のアンタレスさんが目に入り、不思議に感じて呼びかけた。

アンタレス「い、いや……。 アンタのそういうとこ、ずるいよな……無邪気すぎる」

〇〇「え……?」

やはりよくわからずに、再度首を傾げると、アンタレスさんは困ったように首をゆるく左右に振った。

アンタレス「何でもない。気にするな」

ぽん、と優しく頭に手を置かれたかと思えば、すぐに離れていく。

とくんと疼きのような胸の高鳴りと共に、アンタレスさんの香りが鼻先をくすぐった。

アンタレス「しかし、メイクは相変わらずだな。服はいいが、メイクはナチュラルすぎる」

そう言われて私は……

〇〇「……いつも、これくらいなので……」

アンタレス「だろうな。けど、おしゃれする時には、メイクも重要だ。 俺に任せておけ。肌が綺麗だからメイクはとびきり映えるはずだ」

アンタレスさんはそう言って、私の頬を確かめるようにそっと撫でた。

アンタレス「アンタ、素材が最高だからな」

アンタレスさんは、今一度私のことを頭のてっぺんから足の先まで見やると、改めて満足そうに微笑んだのだった…-。

 

 

 

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