アンタレスさんと約束をした翌日のこと…-。
私は、呼び出されてとある店の広い調理場へ来ていた。
(ここを貸し切ったって……すごいな)
アンタレス「これからチョコを作るからな。見てろ」
アンタレスさんは自信たっぷりな様子で、豊富に揃えられた調理器具を手に取り早速準備を始めた。
〇〇「アンタレスさん……お手伝いしましょうか?」
ただ見ているというのも気が引けて、声をかけるも……
アンタレス「大丈夫だ。アンタは、そこに座って見ていればいい」
そう返事をされて、椅子に座らされてしまう。
仕方なく、言われた通り腰をおろしてアンタレスさんの料理に目を向けた。
アンタレス「アンタが昨日、おいしいと言っていた種類のチョコを使うぞ」
ぱりんと小気味よい音を立てて、チョコが割れる。
軽快な音を立ててチョコが細かく刻まれていくと、甘い香りが厨房に溢れ始めた。
〇〇「いい香り……」
アンタレス「次は、とろとろの生クリームだ」
真っ白なとろみを、まるで手品の手つきのように鮮やかな流れで鍋に注ぎ、温めていく。
その後も、次々と繰り広げられる料理の手つきはどれも目を奪われるように鮮やかで……
(アンタレスさんって、お菓子作りもこんなに器用にこなせるんだ……)
甘い香りとアンタレスさんの芸術的な動きに、期待は膨らむばかりだった…-。