月SS キスの味

〇〇と共に俺の部屋へと戻ってきた後、俺は彼女をそっとソファに座らせた。

少し緊張している彼女を愛しく思いながら、俺はチョコの箱を開く。

アンタレス「俺が食べさせてやる。どれがいい?」

尋ねれば、〇〇は頬を赤らめ、目を伏せた。

〇〇「っ……で、でも……」

アンタレス「恥ずかしがるなら、もっと恥ずかしい方法で食べさせてやってもいいが……」

〇〇「えっ……!」

驚いたように目を見開き、俺を正面から見つめる。

(素直な奴だな)

くすりと笑みをこぼしながら、彼女の目を見つめ返した。

アンタレス「冗談だ」

〇〇「ひ、ひどいです……」

アンタレス「くくっ、ほらいいから、どれから食べたいか早く選べよ。 これか? それともこっち?」

じっと彼女の様子をうかがいながら訪ねる。

〇〇「じゃあ……このピンク色のがいいです」

アンタレス「わかった……ほら、口開けてみな」

チョコを摘まみ上げ口元に寄せると、〇〇は恥ずかしそうに口を開いた。

(こんなに頬を染めて……可愛い奴だな)

〇〇「っ……」

おずおずと開けられた唇に、チョコをそっと押し込む。

その瞬間、俺の指先が〇〇の唇に微かに触れて……

アンタレス「柔らかい唇だ……」

恥じらうように体を震わせる彼女に、愛おしさが溢れてくる。

(……本当は今すぐにでも抱きしめてキスをしたいが……)

(夜は長い。たっぷりと時間をかけて可愛がってやるよ)

欲求を抑えながら、俺は〇〇の温もりが残る指先にキスをした。

すると彼女は、さらに頬を赤く染め、小さく口を動かしていたが……

〇〇「あ……おいしい」

〇〇が目を輝かせながら、嬉しそうにつぶやく。

アンタレス「ロゼスパークリングワインの入ったボンボンショコラだ。 アンタが昨日おいしいって言ってたスパークリングワインと似たのを探してきたんだ」

〇〇「そうなんですね! だからすごく味が似てて……」

〇〇が輝く笑顔を俺に向ける。

視線が絡み合った瞬間、彼女ははっと息を呑み頬を染めた。

(本当に、くるくると表情が変わるな。それに……)

(アンタをそうさせているのは……全部俺だなんて)

(参ったな……いよいよ我慢がきかなくなりそうだ)

アンタレス「……可愛いこと、しすぎだろ」

〇〇「えっ……?」

アンタレス「いいから、俺にも食べさせろよ」

俺が限りなく甘い声でそう言うと、彼女は恥ずかしげにうつむきながらチョコに手を伸ばした。

〇〇「……どれが、いいですか?」

アンタレス「俺は……その白いやつだな」

俺の示したチョコを、〇〇が細い指でそっと摘まむ。

(恥ずかしくて仕方がないくせに、絶対に断らないんだよな……)

(本当に可愛い奴だ……)

彼女の健気な姿に、優しい熱を帯びた感情が溢れてくる。

(……愛しくて、たまらない)

〇〇「あの……どうぞ」

彼女に促され、俺はゆっくりと唇を開く。

次の瞬間、チョコの甘い香りが口いっぱいに広がった。

アンタレス「ん……こっちはゴールドスパークリングだから、すっきりとした味だな」

〇〇「ゴールドスパークリング……そうなんですか?」

無垢な瞳が俺に向けられる。

(あんまり無防備な顔を俺に見せるなよ。そんな目を向けられたら……)

口の中でころりとチョコを転がし、静かに口の端を上げて……

アンタレス「じゃあ、おすそわけだ」

〇〇「っ……!」

囁くと同時に、〇〇の腰に腕を回す。

ぐいと引き寄せれば、彼女の温もりが近くなり……

〇〇「ん……っ」

(甘い……)

重なった唇の隙間から、舌をそっと差し込むと、心なしか、チョコの甘さが増したような気がした。

アンタレス「味わえたか?」

〇〇「え……あ、あの……」

戸惑ったように声を震わせる彼女を、目を細めて覗き込む。

アンタレス「ゴールドの味、わかったか?」

もう一度尋ねると、彼女は困ったような表情を浮かべながら小さく首を振った。

〇〇「突然で、よくわからなくて……」

(……まったく、アンタはわかってて言ってるのか?)

(そんなこと言ったら……こうなるにきまってるだろ)

アンタレス「じゃあ、もう一度だな……」

〇〇の返事を待つことなく唇を重ね、強く舌を絡める。

すると、少しずつ彼女の体から力が抜けていって……

(もう、チョコの味なんかわかるわけないか……)

キスの味に溺れるように、彼女を抱く腕に力を込めた…-。

 

 

おわり。

 

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