第3話 王子の恋人

ラスさんに連れられ、部屋へとやってきた後…-。

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ラス『すぐその気にさせてみせるから……覚悟しててね?』

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(ラスさんが、私をその気にさせるって……)

(本気で言ってるの……?)

突然迫られてひどく混乱した私は、じりじりとラスさんから距離を取る。

ラス「そんなに警戒しないで。無理にどうこうするつもりはないよ。 姫のご機嫌をうかがうには、まずデートからかな?」

〇〇「え……?」

(ラスさんとデート……?)

ラス「ちょっと遠回りな気もするけど、女の子を怖がらせるわけにもいかないし。 順序通りに……ね?」

〇〇「えっと、二人でどこかに出かけるぐらいなら構いませんけど……」

ラス「本当? 嬉しいよ、ありがとう」

ラスさんはクスリと、色っぽい笑みを浮かべる。

ラス「行きたいところとか、気になる場所はある?」

そう問われ、城へ来るまでに目にした、要塞のような古い建物が脳裏に浮かぶ。

〇〇「そうですね……やっぱり、あの大きな監獄が印象に残ってます」

私の言葉に、今までにこやかだったラスさんがその整った顔をしかめた。

ラス「それは駄目。あそこはオレなんかより、こわ~い人達がたくさんいるからね」

その言葉に身をすくみ、私は思わず自分の体を守るように抱きしめる。

ラス「あの場所に近づいちゃ駄目だよ。約束できる?」

〇〇「はい……約束します」

ラス「うん。いい子だね」

髪に優しいキスが落とされる。

それだけで、また心臓がうるさく鳴り始めた…-。。

……

翌日、ラスさんが連れていってくれたのは、女性達が集まる社交場だった。

女性1「ラス様がいらしたわ! 相変わらず、匂い立つような色香……」

女性2「あのお姿を見ているだけで、体が疼いてきちゃう……!」

(女の人達が皆、ラスさんを見てる……)

ラスさんが女性達に向かって、ひとたび軽く微笑むと……

女性達「はあぁぁん…………!」

店内はうっとりとしたため息で満たされ、にわかに色めき立つ。

ラス「ここは目立ってしまうね。こっちへ……」

〇〇「は、はい」

……

ラスさんに手を引かれてやってきたのは、王族専用のVIPルームだった。

〇〇「すごく豪華な部屋ですね……」

(この部屋……あの女性達と一緒に使うこともあるのかな)

滑らかなビロードのソファに腰かけると、何故だかそんなことが気になって……

〇〇「……女性達、皆ラスさんをみていましたね」

ラス「え?」

〇〇「あっ……」

(いけない。私、つい……)

いたたまれない気持ちを覚えた私は、ラスさんから目を逸らしてしまう。

けれど、彼はどこか楽しそうに私の顔を覗き込んできた。

ラス「へぇ……気になった?」

〇〇「い、いえ……」

ラス「……ふ~ん」

ラスさんの口角が、ニッと吊り上がる。

ラス「今は、〇〇がオレの恋人だよ」

ラスさんは少しも悪びれることなく、堂々と言ってのけた。

〇〇「私、ラスさんの恋人になった覚えは…-」

ラス「どうして? オレはこんなにキミを求めてるのに」

言葉を被せるように、ラスさんが私の肩にそっと腕を回す。

甘い空気が部屋を満たし、髪を梳くように優しく撫でられて……

ラス「……オレの言葉が信じられない?」

いつもより低いラスさんの声が、私の耳元で切なく響いた。

けれど……

〇〇「困らせないでください……」

ラス「……」

二人の間に、束の間の沈黙が落ちる……

ラス「キミが信じてくれないなら……言葉を伝えたところで、意味なんてない。 信じられるのは、抱き合う時の温もりだけだからね。 そう……心や言葉なんて、何の意味もないんだ」

〇〇「え……?」

突然曇ってしまった彼の表情に困惑していると、ラスさんはわずかに気まずそうな顔をした後、再び妖艶な笑みを浮かべた。

ラス「だから〇〇……早くキミが欲しいよ……」

そうつぶやいた後、ラスさんは私の頬に手を差し伸べて……

そっと唇に触れると、親指の腹で輪郭を柔らかくなぞった。

(ラスさん……)

ただそれだけで、胸がどうしようもなく疼いてしまう。

(だけど……)

―――――

ラス『信じられるのは、抱き合う時の温もりだけだからね』

―――――

(……ラスさんはとても魅力的で、私を本当に大切にしてくれる)

(だけど、ラスさんが欲しがっているのは私の体だけ)

そう思った瞬間、胸に鈍い痛みが走る。

(いつか本当に、彼を好きになる日がくるかもしれない)

(だけど……ちゃんと気持ちを通わせないまま、このまま流されるなんて嫌……)

ラスさんといると、心揺れてしまう自分を戒めるように……

並んで座るソファの上で、私はわずかに彼と距離を取ったのだった…―。

 

 

 

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