月7話 通い合う心

このままでは、ラスさんが監獄送りになってしまうと知り…ー。

○○「違います!本当に、後ろ暗いことなんて何もないんです。だって、ラスさんは……」

私は縋るような思いで、国王様に弁明を続けた。

○○「あの時、私に求婚して下さったんです……!」

ラス「!」

国王「何!?まさか、ラスが……?」

○○「ほ、本当です……私はそれをお受けして。 その、二人で誓いの口づけを……」

真っ赤な嘘を話すうち、自分でも顔が熱く火照ってくるのがわかった。

(こんな話をして、ラスさんはどう思うだろう)

(だけど、このままラスさんを監獄に送るわけには……!)

私は恥じらいを覚えながらも弁明を続ける。

すると、しばらくの後…ー。

国王「二人がそんな仲になっていたとは……。 ……わかった。この事は、これからゆっくり話し合うとしよう」

国王様は戸惑いながらも、ほっとしたように目元を和らげた。

……

国王様に許され、謁見の間を後にすると…ー。

ラス「こっちへ……」

ラスさんが私の腕を取り、大きな柱の影へと引き込む。

(えっ?)

ラス「○○……」

熱に浮かされたように、ラスさんは私の首筋にいくつもキスを落としていく。

ラス「やっぱり、キミもオレと結ばれたかったんだ?」

○○「っ!そんな……!」

からかい交じりの言葉を受け、頭に血が上る。

○○「私があの時、どんな気持ちで……!」

ラスさんの胸を思い切り押すものの、更に強い力でぎゅっと抱きしめられる。

ラス「嬉しかったよ……オレもキミを妻に迎えたい」

そう囁きながら、ラスさんは私の耳を甘噛みした。

熱い舌先が首筋を這い、激しく求められて……

(でも、こんなのは……!)

あくまで体だけを求めようとするラスさんに、私の心は哀しみと怒りで、ぐちゃぐちゃになる。

○○「それなら……どうして、ちゃんと向き合おうとしてくれないんですか? あなたは、何をそんなに恐れているんですか……?」

ラス「……オレが、恐れているもの?」

私の問いに、ラスさんはぴくりと体を震わせる。

そして、わずかに逡巡すると…ー。

ラス「……形のないもの」

薄く笑みを浮かべながら、彼はぽつりとつぶやいた。

ラス「体は正直だよ。好きなところに触れてあげれば、ちゃんと健気に反応する。 でも……形のない愛は、オレの手に負えない」

(ラスさん……)

ラス「この手で触れられない幸せなんて陽炎のように儚い。 どんなに手を伸ばしても……いずれ消えてしまう。 そんな不確かなものを求めて傷つくぐらいなら、いっそ……」

苦しげな彼の声を聞いた瞬間、花畑での出来事が頭を過ぎる。

(そうか……この人は)

(お母様のようになることが、怖いんだ……)

その色欲があまりに強く、誰とも心を通わせることが叶わなかった彼の母親……

(だけど……)

ラスさんの深い孤独と寄り添うように、そっと彼の手を取る。

○○「それなら……私があなたに心を渡します」

ラス「え……? オレを、好き……?キミの心を、オレにくれるの……? ……そんなの嘘だ。だってそんな子、今まで一人もいなかった、 それに、好きならどうしてオレを拒んで…ー」

○○「好きだからこそ……体の繋がりだけじゃ嫌なんです」

不安げに揺れるラスさんの瞳をまっすぐ見つめて、私は想いを言葉に乗せる。

ラス「……っ」

ラスさんは大きく目を見開いた後、うつむいてしまう。

けれど、長い沈黙の後…ー。

ラス「でも……。 オレはキミを、どう愛せばいいか……わからない」

消え入りそうな声で、ラスさんがつぶやいた。

そんな彼の手を、私は両手でそっと包み込む。

○○「決まった形なんてありません。どんなに不器用でも……。 二人で心を交わしながら、ゆっくりと築き上げていければ、それで……」

ラス「○○……」

ラスさんがそっと、私の頬に触れる。

ラス「いつか……消えてしまうのかもしれない。 この選択を、後悔する日がくるのかもしれない。 だけど、オレは……。 この心も、体も……オレのすべてで、キミを愛してる…ー」

ラスさんはそう言うと、想いのすべてを込めるかのように私をかき抱いた…ー。

 

 

 

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