第2話 恋するショコラ

ショーウィンドウを覗きながら大通りを二人で歩いていると、あるショップからリカさんを見つけた店員さんが顔を出した。

ショップ店員「ダーク、いいところに来たな! うちの新作食べていけよ」

リカ「ん? ああ、いいぜ」

(ダーク……)

手招きに応じて店に入る彼を見て、私は彼と初めて会った時のことを思い出した。

リカさんは『ダーク』という偽名を使って、時おり身分を隠しては街をふらつくことがあったのだ。

彼が言うには街の人達との交流という名目らしい。

(リカさん、相変わらず続けてたんだ)

(人前でリカさんの名前を呼ばないように気をつけよう)

リカ「こいつの分も頼むよ」

〇〇「え!?」

急にリカさんに腕を引かれて、カウンターの前に座らされた。

店員さんは満面の笑顔でガラスケースの中からショコラを取り出す。

ショップ店員「もちろん。女の子の意見は大歓迎だよ! なんたって『恋するショコラ』が今回のテーマだからね」

〇〇「恋するショコラ……?」

リカ「こいつに説明してやって」

カウンターに肘をつきながらリカさんが私を指差す。

ショップ店員「実はうちの国のリカ王子がね、なんかショコラをもっと世界中に売り出したいらしくてさ。 今、ギフト用のショコラを作ることが奨励されてるんだよ」

〇〇「リカ王子……」

私は思わず隣で適当に相槌を打っていたリカさんに視線をやった。

リカ「……」

彼は軽く首を振って、店員さんの話を聞くように私に促す。

(そうか、あんまり見てたら怪しまれるかも……)

すると…-。

ショップ店員「ダーク? どうしたんだ?」

リカ「ん? なんでもない。とりあえず、最高の一粒を出してみろよ」

にやりと挑戦的な笑みを浮かべる彼は、店員さんに渡されたショコラを口に含んだ。

リカ「そうだな、この深いコク……俺は好き。カカオがしっかり主張してる。 それにこの刺激はチリペッパーか? アクセントになっていていい。大人は好きそう。 けど、〇〇、お前はどう?」

私は彼に問われて、ショコラを一粒食すと…-。

〇〇「私もわりと好きな味です。こういうビターなのっていいですよね」

リカ「へえ……」

彼は意外そうな顔してもう一口ショコラを口に放り込むと……

リカ「……女って、こうふわっと甘いのが好きなんだと思ってた。 けど、お前みたいなのもいるんだな」

ふわりと彼の目元が柔らかく細められる。

(ショコラより、こっちの方が甘いかも……)

〇〇「えっと、甘いのも好きですけど、濃厚なのはショコラを食べたって感じがするので……」

なぜか心臓が騒ぎ出して適当なことを言うと、彼はスツールから立ち上がった。

リカ「じゃあ、次はあっちの店のも食べてみようぜ」

〇〇「あ……っ」

そのままリカさんは店を出てしまう。

慌てて私が頭を下げると、店員さんは苦笑して見送ってくれたのだった…-。

 

 

 

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