太陽8話 憂いの国の王子

とっさにミリオンくんを庇い、飛び出すと……

怯んだ女性のナイフが、私の腕を掠めた。

〇〇「っ……!」

ミリオン「〇〇ッ――!!」

ミリオンくんが私の肩を抱き、ひどく焦った様子で傷を確かめる。

ミリオン「大丈夫か、怪我は……!」

〇〇「平気です、少し掠めただけですから……」

ナイフの切っ先が当たり、破れた袖を押さえる。

ミリオン「隠すな」

ミリオンくんは私の手を外すと、そこに薄く滲んだ血を見るなり、苦しげに眉根を寄せた。

女性「自業自得よ……! この国の人間は、みんなこの男に騙されてる!」

女性は護衛に取り押さえられながら、なおも興奮して叫び続ける。

男性「騙されてるって、どういうことだ……?」

若い女性「まさか、あのミリオン様が人に恨みを買うなんてこと……」

人々は不安な表情を浮かべ、にわかに動揺が広がる。

(このままじゃ、ミリオンくんが誤解されてしまう……)

国を立て直すため、きわどい外交を繰り返してきたとしても……

この国を思うミリオンくんの気持ちは本物だと、私はよく知っていた。

(この国の人々にだけは、そのことをわかってほしい……)

〇〇「ミリオン王子は、皆さんを騙してなどいません……!」

私は声を振り絞り、人々に語りかける。

〇〇「彼は誰よりもこの国を愛し、民を思い……その身にすべてを引き受けて、この国を守っている人です」

(どんなにつらい時でも、決して笑顔を絶やさずに……)

この国を慈しみ、いつも心を寄り添わせている。

ミリオン「〇〇……」

すると…-。

男性「そうだ! ミリオン王子はいつだって、俺達の暮らしを一番に考えてくださっている!」

年配の女性「ええ……ミリオン様のおかげで貧しい時代は去り、今の豊かな暮らしがあるのです」

皆、口々にミリオンくんへの感謝を伝え始めた。

ミリオン「皆さん……ありがとうございます……」

ミリオンくんは静かに微笑むと、皆さんに美しく礼を返し…-。

〇〇「っ……!?」

意外なほど逞しい腕で、私を軽々と抱き上げてしまった。

ミリオン「予定はすべて中止だ。すぐに城へ戻ろう」

ミリオンくんは私を抱え、人目を避けるように車へと向かう。

〇〇「あの、私、自分で歩けますっ……!」

ミリオン「いいから……黙って抱かれてろ」

私にだけ聞こえるように、そう耳許で囁く。

(ミリオンくん……?)

彼の瞳には、戸惑いが色濃く映しだされていた…-。

 

 

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