月9話 笑顔の理由

差出人のない手紙が届き、指定された場所へ向かうと……。

?? 「……トロイメアの〇〇様ですね」

他国の衣をまとった使者が二人、そこで私を待っていた。

(この人の顔、どこかで……?)

そのうちの一人の顔に見覚えがあり、はっと息を呑む。

晩餐会の夜に、ミリオンくんと親しく話していたメスキナ国の大臣だった。

(この人が……!)

メスキナ大臣「手紙に書いた通り、訂正記事を書く代わりに、一つ条件があります」

〇〇「条件とは……?」

メスキナ大臣「トロイメアの姫として、シンセアとの協定を破棄していただく」

思わぬ申し出を受け、心に戸惑いが浮かぶ。

〇〇「それは、私が決められることでは……」

メスキナ大臣「ここまで来て渋るのですか?」

使者は冷たく笑って、僅かに口の端を持ち上げた。

メスキナ大臣「トロイメアの姫も薄情なお方だ。 シンセアがこのまま廃れても構わないと仰るのですね?」

〇〇「そんな、私は……!」

メスキナ大臣「貴方様も、あの王子の美しい仮面に騙されているのです」

使者は同情するように、私を見つめて眉尻を下げた。

メスキナ大臣「ミリオン国は、嘘と欺瞞にまみれた王子によって支配された愚かな国……。 今こそ立ち上がり、王子の黒い思惑から民を解放する時なのです」

(そんな……)

ミリオンくんの、哀しい過去を思い出す。

貧困にあえぎながら、皆の幸せだけを一途に追い求め……

美しい笑顔の裏で、ひたすら苦しみに耐えていた彼の孤独を思う…-。

〇〇「残念ながら……貴方の言葉は、私にとっての真実ではありません」

私の答えに、大臣の顔つきが変わる。

〇〇「私はミリオン王子を信じています。噂に屈することなく、この国を守り抜いてくれると……」

メスキナ大臣「そうですか……では。 手っ取り早く、貴方に我が国へ来ていただくことにしましょう」

(!?)

もう一人の使者が私を抱きかかえ、口元を抑え込む。

(この匂い……?)

くらりと意識が揺れ、視界がぼやけていった……。

 

 

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