月7話 素の彼

それから、しばらく……。

ミリオン「他国の情勢に影響されて、相場が値下がりしてる……このままじゃ商人達の不満が募るな。 まったく、無能な輩が俺の足を引っ張るんだから」

ミリオンくんは経済紙を机に広げ、深いため息をこぼした。

ついさっきまで、来賓の前でにこやかに話をしていたのに……

あの夜以来……

ミリオンくんは私の前でだけ、素の表情を見せてくれるようになった。

ミリオン「……なんだよ」

私の視線に気づいたミリオンくんが、露骨に眉をしかめる。

〇〇「いえ……ただ、器用だなぁと思って」

ミリオン「……は? それだけ?」

〇〇「はい、見事な使い分けですよね」

ミリオン「ふつう、ヤな奴だなとか思うだろ」

(嫌な奴? ミリオンくんが……?)

時折、乱暴に振る舞うことがあっても、彼が心からこの国を大切に思い、弱い立場の者達を、必死に守ろうとしていることはよくわかっていた。

〇〇「私はミリオンくんのこと、ヤな奴とは思いませんよ? ね?」

子猫「にゃぁ~」

ミリオン「……やっぱお前、変人なんだな」

甘える子猫の喉を撫でてやりながら、ミリオンくんがぽつりとつぶやく。

(私、何かおかしなこと言っちゃったのかな?)

素っ気ない彼の態度に、苦笑いを浮かべると……。

従者「ミリオン様!」

血相を変えた従者さんが、部屋へ駈け込んできた…-。

 

 

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