第2話 ローリングショット!

アインツさんに手を引かれ、私は大通りを歩いていた。

肌に当たる風は冷たいのに、彼と繋いだ手はすごく温かい…―。

アインツ「色んな店があるな」

○○「そうですね」

彼と同じように、辺りの店を見渡す。

道の少し先にある出店で、一際賑やかな声があがった。

○○「あれは……輪投げ?」

店の奥にはぬいぐるみやおもちゃが並び、子ども達がその景品に向かって輪を投げている。

(元いた世界と同じだ……)

子ども達の頑張る姿を見つめていると、アインツさんが私の顔を覗き込んだ。

アインツ「あのぬいぐるみが欲しいのか?」

○○「え?」

アインツさんに尋ねられ、私は自分が棚に並んだぬいぐるみを見つめていたことに気づく。

○○「欲しいと言うか……私も昔、ぬいぐるみが欲しくて試したことがあったんです」

(懐かしいな……)

そう思っていると、アインツさんは私の手を引き寄せた。

アインツ「よし!○○にあのぬいぐるみをとってやろう!」

○○「え……?」

アインツ「白いフカフカしたウサギのぬいぐるみだな?任せておけ!」

○○「ありがとうございます」

アインツ「礼はいらないぞ。これがオレの使命だからな!」

○○「使命……ですか?」

(どういうことだろう……?)

私が不思議に思っているうちに、アインツさんは店主さんから輪を受け取り、もうぬいぐるみに向けて狙いを定めていた。

アインツ「○○のために、オレの秘められた力を解放しよう!アインツスーパーローリングショーット!」

アインツさんの投げた輪が、早い回転を伴ってぬいぐるみへと飛んでいく。

(すごい……!)

けれど…―。

○○「あ……」

輪はぬいぐるみの横をすり抜けて落ちていった。

アインツ「なにぃー!?」

アインツさんは大声を上げ、頭を抱える。

アインツ「ぬううっ、あのぬいぐるみには、呪いでもかかっているのか!?」

○○「惜しかったですね」

アインツ「……○○も試しにやってみるか?」

○○「え……はい!」

アインツさんから輪を受け取り、私はぬいぐるみに狙いを定める。

○○「えい!」

輪が弱々しくぬいぐるみの方へ飛んで行く。

そして…―。

○○「嘘……入った……」

私の投げた輪は、まずはぬいぐるみの耳に引っかかり、そのまま体をくぐり抜けていった。

アインツ「なんてすごいんだ!○○は!」

逞しい腕が私の体を引き寄せる。

アインツさんは私を抱き上げ、嬉しそうに笑った。

○○「っ……!」

不意に彼の顔が近づいて、私の胸が音を立てる。

笑った彼の口の端に八重歯が覗く。

(わ……!どうしたんだろう……私……今……アインツさんのことを、可愛いって……)

アインツ「呪いも乗り越えてぬいぐるみを手に入れるとは、オレは感動したぞ!○○!さすがオレの○○だな!」

(オレの……?)

その言葉に、また私の胸が一層高鳴ってしまう。

アインツ「でも、次はオレが取るからな!欲しいものがあったらいつでも言ってくれ!」

○○「はい……」

アインツさんは私にぬいぐるみを手渡して、微笑む。

その笑顔に答えつつ、私は胸の高鳴りを抑えられずにいた…―。

 

 

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