月5話 その手には

アインツさんを待つ間、私は境内を散策する。

(アインツさん、忘れ物は無事に見つかったかな?)

空を見上げつつ、彼のことを思い浮かべていると…―。

アインツ「○○!」

アインツさんの声が聞こえて、私は振り向くと…―。

アインツ「ま……待たせたな!」

彼は手に何かを持ち、息を切らしながら私の方へと走って来た。

○○「大丈夫ですか?」

アインツ「ああ!だ……大丈夫だ!」

○○「忘れ物は見つかりましたか?」

アインツ「ああ……」

アインツさんは膝に手を置き、息を整えようと必死になっている。

その手には、見覚えのない紙袋が握られていた。

(あれ?あんな大きな荷物、アインツさん持ってたかな……?)

不思議に思いながら見ていると、ようやく息が落ち着いたのか、アインツさんが顔を上げた。

アインツ「これを、オマエに!」

○○「私に?」

アインツさんは袋から中身を出す。
それは社に来る途中で見た羽子板だった。

○○「羽子板……」

アインツ「これを、オ……オマエに……!」

○○「私に?」

アインツさんはそれ以上言えずに、顔を真っ赤にさせる。

そして…―。

アインツ「○○、勝負だ!」

○○「え……?」

飾りの美しい羽子板が、太陽の光を受けて、手元で輝いていた…―。

 

 

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