第5話 震える肩

薄暗い曇り空の下、私は全力で街を駆け抜けた。

路地裏まで辿りつき、その場にしゃがみ込んでしまう。

(怖かった・・・・)

真琴君の残忍な表情を思い出し、恐怖がまた体を支配していく。

(でも・・・・)

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真琴「かっわいー!お前、どこから来たの?」

真琴「お前はほんとにかわいいねー!」

ー----

動物達に向けられた、真琴君の優しい笑顔を思い出す。

(・・・・あの笑顔は、つくりものなんかじゃない)

(真琴君・・・・本当のあなたは、いったい・・・・)

その時・・・・ー。

??「昼間、真琴と一緒にいた女だな」

○○「・・・・!」

背中に冷たい何かが押し当てられ、低い声が背後から響く。

(銃・・・・?)

男「一緒に来てもらおう」

○○「やっ・・・・!」

(真琴君を襲った人達・・・・!?)

腕を掴まれ、近くに止めてある車に乗せられそうになった時・・・・ー。

真琴「僕が利用するつもりだったのに、何で捕まってるんだよ」

声のした方を見やると、真琴君が呆れた顔で立っていた。

男「真琴・・・・!何もするなよ、でないと、こいつを・・・・」

銃口が、私の頭に向けられる。

真琴「うん?撃てば?」

(・・・・!)

男「なっ・・・・」

平然と言う真琴君に、男は唖然としているようだった。

真琴「あっはは!面白い顔」

真琴君は、心底楽しいといった様子で笑っている。

男「ふざけるなよ・・・・俺は本気だ!」

○○「・・・・!」

銃口が頭に押しつけられ、恐怖で顔が青ざめていくのがわかる。

真琴「助けて欲しいなら、助けてって言えよ」

そんな私に、真琴君は何かを期待するような様子で言葉を放つ。

○○「助けて・・・・」

かすれる声で真琴君に助けを求めると・・・・

彼は満足そうに目を細めた。

男「何をごちゃごちゃと言ってるんだ!」

男が怒鳴り声をあげた、その時・・・・ー。

男「あっ・・・・?」

急に、銃を持つ男の腕が変な方向によじれた。

そして・・・・

男「・・・・ぁぁあ!」

腕から鈍い音が鳴り、私に突きつけられていた銃が地面に落ちる。

真琴「○○が苦しんだ顔は、僕のお気に入りなんだよ。 何でお前が、その顔をさせてる訳?」

真琴君がそう言って瞳を光らせると、今度は男の脚が変な音を立て始める。

真琴「あははは・・・・っ!」

○○「真琴君・・・・!もうやめて・・・・!」

思わず彼に向ってそう叫んでしまった。

真琴「は?君、さっき殺されかけてたんだよ?何で止めるの?」

真琴君の声に、怒りが宿る。

○○「それは・・・・」

真琴「こいつらは・・・・僕の全てを奪ったんだよ。 父さんも、母さんも・・・・僕の大切なものを、全部・・・・!」

真琴君の表情が、歪んでいく。

 

ー----

真琴「さっき僕らを襲った奴らは大統領の側近なんだけど、僕ら王族を狙ってるんだ」

ー----

真琴「そうだよ。僕の家族は、大統領制になった時に殺された」

(真琴君・・・・!)

微かにふるえる彼の肩を見つめる。

真琴「僕はこいつらを許さない! 父さん達を殺して、のうのうとでかい顔して生きてるこいつらを! 全員に、死ぬより辛い苦しみを与えてやるんだ・・・・あははははっ!!」

真琴君のその叫びには、怒り、苦しみ、悲しみ・・・・彼の全ての感情が込められているようだった。

悲痛な叫びに、私の胸が締めつけられる。

○○「・・・・!」

真琴君の瞳から、一筋の涙が流れ落ちていく。

○○「真琴君・・・・お願い・・・・!」

気がつくと、私は真琴君に駆け寄り、彼を抱きしめていた・・・・ー。

 

 

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