第2話 もう一人の発現

その翌日…ー。

カストルさんは調子が戻らないのか、お昼を過ぎてもまだ眠り続けたままだった。

(大丈夫かな……)

私が部屋を訪れると、部屋の前で侍女を従えた王妃様とすれ違った。

王妃「◯◯様……カストルの様子を見に来てくださったのですか?」

◯◯「はい。カストル王子の具合は、いかがでしょうか?」

王妃「まだ眠っていますが、もうまもなく目覚めると思います」

◯◯「……あの」

王妃様にお願いして、王子の部屋に入れてもらった。

王妃「◯◯様……本当に、カストルを助けてくださって、ありがとうございます。 カストルは、将来この国の王位を継ぐ身。眠りに落ちた折は、国中がひどく混乱しました……」

◯◯「いえ。力になれてよかったです」

王妃様の瞳に涙が滲むのを見て、力ストルさんへの深い想いが伝わってくる。

王妃「それでは……私は公務がありますので、これで」

◯◯「はい」

王妃様はまだ心配そうな顔をしていたけれど、やがて侍女の方と一緒に部屋を出ていかれた。

残されたのは、眠ったままのカストルさんと私、ただふたり……

ーーーーー
カストル「……大丈夫です。目覚めたばかりだからでしょうか……。 ◯◯様、驚かせて申し訳ありません」
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昨晩のカストルさんの青い顔を思い出し、不安が募る。

(心配だな……)

かすかに胸が上下する様子に、そっと椅子から腰を浮かせ、彼の顔を覗き込むと…ー。

◯◯「っ!?」

ふいに、腕を強く引き込まれた。

いきなりのことに驚き、顔を上げると……

鋭く鈍い光をたたえ瞳が、私を射抜いていた。

(この瞳は……)

ーーーーー
◯◯「カストル王子! 大丈夫ですか!?」

カストル「……」
ーーーーー

(あの時の瞳と同じ……!?)

まるで心の奥まで射抜かれてしまいそうな強さに、呼吸が苦しくなる。

◯◯「カ……カストルさん?」

??「……違う。俺はカストルじゃない。お前か? 余計なことをしてくれたのは……」

◯◯「……!?」

(声色も口調も、カストルさんと違う……! ?)

豹変した王子に、私は…一。

◯◯「……だ、誰なんですか?」

??「……」

自分はカストルではないという青年は、じっと私を見つめた。

その瞳には、力強くきらめく意志の強さがあるように思えた。

ポルックス「俺は……ポルックスだ」

◯◯「ポルックス……?」

ポルックスと名乗った彼は、挑戦的な笑みを浮かべた。

私の腕を離した手で、今度はゆっくりと、品定めをするように私の顎を持ち上げる。

ポルックス「何が起こったかわかんないって顔してんな……ハハッ、いい顔だ。 余計なことしやがって……そんなに俺に関わりたいなら……。 そうだ、ここで俺の女にしてやろうか?」

◯◯「な……っ!」

彼の顔が眼前に迫ってくるけれど、金縛りにあったように体が動かず、ぎゅっと目を閉じることしかできない。

(怖い……でも、動けない! )

彼の唇が、私の唇に今にも触れそうになったその時…ー。

医師「カストル王子? お目覚めですか?」

部屋の扉がノックされ、カストルさんの主治医らしき方が現れた。

ポルックス「……ふん、せっかくいいところだったってのに」

医師は、悪態をつくカストルさん……ポルックスさんを見ると、顔色をさっと変えた。

医師「! まさかお前は…ー」

ポルックス「よう、久しぶりだなじじい」

医師「ポルックス、やはり消えてなかったのか……! !」

◯◯「!?」

(ポルックスさんを、知ってる?)

医師「こ……こうはしていられない、この事実を城の皆に伝えなければ!」

医師は慌てふためきながら、部屋から駆け去っていった。

◯◯「あ、ま、待って…ー」

カストル「おっと」

医師の後を追おうとした私を、ポルックスさんが後ろから抱きしめるようにして引き留める。

ポルックス「せっかく邪魔者がいなくなったんだ。さっきの続きをしようぜ?」

ポルックスさんが意地悪く笑いながら、指を私の首筋に滑らせる。

◯◯「やめて……っ!」

ポルックス「ハハッ!!」

(一体……何がどうなってるの! ?)

周りで起こっていることも、自分の置かれている状況も理解できずに、私はただ戸惑うことしかできなかった…ー。

 

 

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