月5話 ポルックスの想い

カストル『……君は優しい人だね。ありがとう、ポルックスのことを心配してくれて』

―――――

その翌日…-。

カストル「……っ……ポルックス……今は出てこないで……」

医者「カストル様っ!」

王子の部屋の前から、苦しげな声が聞こえてきた。

カストル王子の容態は安定せず、あれから、ゆっくり話すこともできなかった。

―――――

ポルックス『……カストルの負担になることはやめろ』

―――――

(私に、何かできることはないかな……)

すると真夜中にも関わらず、部屋の扉が勢いよく開き……

ポルックス「お前……まだいたのか」

〇〇「え……!?」

ポルックス王子が大股で部屋に上がり込み、驚いて身を起こした私を、再びベッドに押さえつけた。

〇〇「……っ!」

ポルックス「言ったよな? この国から出て行けって」

〇〇「……はい。でも、あなたの力になりたくて…-」

ポルックス「黙れ! 余計なことはするなと言ったはずだ!! どうしてお前はカストルを困らせることばかりする! 俺は……アイツに辛い思いをさせるのは……もうたくさんなんだ」

ポルックスさんの声が、激しく私を責める。

(ポルックスさん……)

―――――

カストル『ううん、それだけじゃない。僕は周りが憎かった。なぜ僕にこんなに期待をするのかって。 いっそ失望された方が、どんなに楽なんだろうと……』

執事『議会の場で暴れたり、街に出ては酒を飲んで喧嘩したり……』

―――――

(全部、カストルさんのため……)

ポルックス「俺の言ったこと、もう一つ覚えてるか?」

〇〇「え……」

ポルックス「忘れたなら、思い出させてやる」

ポルックスさんの手が、私の胸元に伸ばされる。

―――――

ポルックス『これ以上、余計なことをするな。 さもないと…-。 お前も、俺がめちゃくちゃにしてやるよ……!』

―――――

〇〇「やめて……!」

ポルックス「お前が悪いんだ、言うことを聞かないからな」

頭の上に縫い止められた両手は、あの時と同じようにびくとも動かない。

やがて胸元のリボンが解かれそうになって…-。

〇〇「カストルさん!!」

思わず、私はその名前を呼んでいた…-。

 

 

<<第4話||<<太陽SS||月最終話>>