太陽7話 人魚の国

〇〇「また明日、会えますか?」

私の問いかけに、サラサくんは笑顔で頷いてくれた…-。

 

それからも私達は、毎日のように海辺で朝から晩まで、二人でおしゃべりを楽しんでいた。

そして今日も…-。

朝食を食べ終えた後、私は急いであの海岸へと向かった。

〇〇「今日も綺麗……」

鮮やかな青い海に太陽の光が反射して、きらきらと輝いている。

天気も晴れ晴れとしていて、気分が軽やかに弾む。

(少し早かったかな……)

昨日サラサくんに会ったのはお昼過ぎ。

朝食を食べてすぐ海岸に向かったことを考えると、今はお昼にほど遠い時間だということがわかる。

(ゆっくり海を眺めながら、サラサくんを待っていよう)

穏やかな気持ちで、昨日サラサくんと過ごした場所へと向かう。

すると…-。

(え……)

サラサくんはすでにその場にいて、私が歩いてくるのを見ると嬉しそうに微笑んだ。

サラサ「おはよう」

〇〇「おはようございます! 待たせてしまいましたか……?」

サラサ「大丈夫、僕も今来たところだよ」

そう言って、サラサくんは穏やかな表情を浮かべる。

(サラサくんの笑顔って、やっぱりすごく綺麗……)

そんなことを思いながら、昨日と同じように岩場へと腰を下ろし、サラサくんと目線を合わせた。

そしてまた、お互いの話に耳を傾ける。

〇〇「人魚の国って、綺麗なところなんだろうなぁ……」

サラサ「うん、とても綺麗なところだよ。 〇〇を連れて行きたいけど、王宮は海の奥深くにあるから、きっと息が続かないと思うよ」

私の知らない世界に住むサラサくんの話は、とても興味深かった。

〇〇「うーん、酸素ボンベがあれば行けるかな?」

サラサ「酸素ボンベ?」

〇〇「空気が詰まった入れ物に、ホースがついてて……」

サラサ「それを口にくわえるの? ……なんだか、大変そうだな」

サラサくんは、私の話を興味津々で聞いてくれた。

たった数日だけど、私達の距離はだいぶ縮まっているように思えた。

(サラサくんも……言葉数が多くなった気がする)

そう思うと嬉しくて、私の顔もほころぶのだった…-。

……

今日も時間を忘れて話し込んでいると、既に太陽が沈もうとしていた。

サラサ「もう……こんな時間」

〇〇「一日が、なんだか早いですね」

サラサ「……」

サラサくんが、難しい顔をしてぎゅっと拳を握りしめた。

サラサ「ねえ、〇〇……おまえはいつまでここにいるの?」

〇〇「え…-」

(それは……)

サラサ「僕は、もっとおまえの話が聞きたい。 ずっといられるの?」

〇〇「……」

(こうして、サラサくんに会いに来られるのは、あとどれくらいだろう……)

(ずっとこうして海辺にいるわけにいかない……でも、私は人間だから彼の国に行くこともできない)

不意に、寂しさに襲われる。

(もっと……私も、一緒にいたいけど)

そんなことを思いながら、彼の質問に答えかねていると…-。

サラサ「そうだ……海底の魔女がいる……」

サラサくんの独り言のようなつぶやきに、思わず顔を上げた。

〇〇「海底の魔女って?」

サラサ「なんでもないよ……ただ……。 〇〇。僕は……僕は、〇〇と一緒に……」

〇〇「え?」

サラサくんは、そこで言葉を飲み込んだ。

(サラサくん……何を言おうとしたんだろう)

彼の思いつめたような表情を見て、胸騒ぎがするけれど…-。

サラサ「じゃあ……また明日」

〇〇「うん、また明日」

ぽつりとつぶやいて、彼は海へと帰っていった。

(大丈夫かな……様子がおかしかったような……)

ざわめく胸を抑えながら、私は一人その場にたたずんでいた…-。

 

 

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