太陽9話 胸に宿る気持ち

男「消えろ、狂気の王子!」

ヘラクレス「!」

突進してくる男に、ヘラクレスはとっさに腕を振り上げた。

〇〇「ヘラクレス!」

けれどヘラクレスは、男の目の前でその手を止めた。

男「!」

ヘラクレス「もう、帰りなよ。ほら、家族の人も心配してるかも。 だから、ね?」

男は悔しそうに、歯ぎしりをする。

ヘラクレスの表情から笑みが消えた。

ヘラクレス「キミにオレは倒せないよ」

静かな声に、男が息を呑んだ。

男「……」

ヘラクレス「行こうか、〇〇ちゃん」

うなだれる男を残し、私達は手をつなぎ歩き出した。

ヘラクレス「森……どうしよっかな~……。 植えなおした方がいいよね? あれじゃあ、動物達も怒るよね」

ヘラクレスが頭を抱えて唸った。

(よかった。いつものヘラクレスだ……)

嬉しさに、思わず声を上げて笑った。

そんな私の姿にショックを受けたように、彼は金色の瞳を見開く。

ヘラクレス「笑った~! どうして笑うの~!」

〇〇「だって……」

ころころ変わる彼の表情に、胸が温かくなっていく。

(そっか私、ヘラクレスのことが……)

胸に宿る気持ちが何かに気づいて、またトクンと音を立てた。

ヘラクレス「〇〇ちゃん?」

〇〇「ううん。何でもない」

天の川が私達の行く道を照らしている。

淡い光が、胸に灯った気持ちのように優しく輝いていた…―。

 

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