太陽8話 取り戻す強さ

力の抜けた足で何とか立ち上がると、ヘラクレスに近づく。

ヘラクレス「……」

私が近づくと、彼が怯えたように体を震わせた。

〇〇「ヘラクレス、その人を離して」

ヘラクレス「……」

〇〇「お願い、ヘラクレス」

彷徨う彼の視線が、ようやく私を見つめた。

彼の荒い息が少しずつ落ちついていく。

ヘラクレス「〇〇ちゃん……オレ……」

引きつったように見開かれていた瞳が、ようやくまばたきをした。

ヘラクレスの手から力が抜け、解放された男が地面に転がり落ちた。

〇〇「ヘラクレス……?」

数度まばたきを繰り返すと、ヘラクレスは壊れた森を見渡した。

ヘラクレス「……森が、ダメになっちゃったね」

穏やかな声でつぶやくと、彼は森から私に視線を移した。

金色の優しい瞳が私を見つめる。

ヘラクレス「〇〇ちゃん……ごめんね、怖い思いをさせて」

優しい声に、私の体から力が抜けていく。

(いつものヘラクレスだ……)

(よかった……)

嬉しさが込み上げて、目の奥が熱くなっていく。

ヘラクレス「わ~!やっぱり驚いたよね? 泣いちゃうぐらい怖かったよね!?」

〇〇「そうじゃ……」

違うと言おうとしても、喉が痛くて言葉にならなかった。

ヘラクレス「あーもー!オレってば~!」

ヘラクレスが焦ったように頭を抱える。

ヘラクレス「どうしようどうしよう~! あ、オレ離れた方がいい? 〇〇ちゃんがその方がいいなら、オレ……。 一人は寂しいけど~……。 でも離れた方がいいなら……」

〇〇「違うの……」

ヘラクレス「え……?」

〇〇「嬉しくて……」

ヘラクレス「嬉しい?」

〇〇「いつものヘラクレスだから」

ヘラクレス「〇〇ちゃん……」

〇〇「それに私、全然怖くなかったよ」

そう言って、ヘラクレスに笑って見せる。

けれど、強がりだとわかったのか、彼は泣き出しそうな顔で笑った。

ヘラクレス「ありがとう、〇〇ちゃん」

ヘラクレスは、まだ震えている私の手に触れようと、手を伸ばした。

少しためらって、恐る恐る私の手を握る。

(温かい……)

大きな手が私の手を包み込んで、彼の温もりが伝わってくる。

その時…―。

男「消えろ、狂気の王子!」

ヘラクレス「!」

鋭い声に振り向くと、男が私達に向かい突進してきた…―。

 

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